第60話

 朝起きると、人型に戻っているスライムが俺の上にのしかかり、こちらを覗き込んでいた。

 覗き込んでいるだけかと思ったがペシペシと頬を叩かれた。痛くはないが。

「あ、起きた」

「おはよう。何してるんだ……ってなんだかデカくないか、お前?」

 寝起きで朦朧としていた自意識が徐々に覚醒するにつれ、目の前のスライムが昨日と違う事に気付いた。

 昨日より一回り、いや二回り大きい。

 例えるなら子供が大人になったような変化だ。いや例えるも何もまさにその通りになっている。

 なんだ、スライムって1日でこんなに大きくなるものか?魔物の成長って早いのか?

 幾らでも寝首はかけただろうから敵意はないんだろう。だが、のしかかられて動けないのは事実だ。

「気のせいですよ」

「いやいや気のせいじゃないだろう。昨日は子供みたいな姿だったのに今はその、なんだ……成長してるし、色々と」

 色は黄緑色に戻っているものの、身体の造形も成長に合わせて大きくなっている。……目のやり場に困る日が続くな。勘弁してくれ。

 変形の技術も上がったのか、髪の毛の擬態もかなり精度が上がっている。ただの黄緑色の髪にしか見えない。

「目の錯覚じゃないですか?」

「そんなわけあるか。口調もなんか違うし」

 口調もかなり落ち着いたように聞こえる。昨日は幼児退行していただけで元々これが素なのかもしれないが。

「取り敢えずどいてくれないか?」

「ん、分かりました」

 思ったよりすんなりどいてくれた。彼女?が乗っていたところがほんのり湿っているのはまぁ目を瞑ろう。

「それで、何でまた俺の上に?」

「何となくです。起きたはいいものの暇だったので」

「はぁ、そうか……。ってお前、デカくね?」

 ベッドから降りて立ち上がったスライムはかなりの身長があった。恐らく俺より少し低いぐらいで、リゼよりも高い。

「またそれですか。別に変わっていませんよ」

「いやいやいや、それは流石に無理がある」

 ……もしかして、自覚がないのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る