第56話

 街に戻ると閑散としていた。大通りを歩く人は皆無で、お店も全部閉まっている。まだ夕暮れ前ぐらいなのに。

 宿に荷物を取りに行くと、女将さんがボロボロの服を着た俺達の顔を見るなり、青ざめた。まるで幽霊を見たかのような。

「お、お、お化け……!」

 口に出された。

「落ち着いてください女将さん、私達生きてますから」

「で、でも、湖のほうにドラゴンが出たって!あんた達、湖に行ったんだろ!?」

「行きましたし倒しました」

「バカ言うんじゃあないよ!ドラゴンって街なんて軽く一捻りできる怪物だろ、それを……!」

「本当です、明日になればわかりますよ。……明日になれば」

「どう言うこったい?」

「まあ、明日をお楽しみに。それより、シャワー借りてもいいですか?1泊分のお代は払いますから」

「あ、ああ、いいよ。客ならドラゴンが出て警報が出された瞬間に居なくなっちまったからね。好きな部屋使いな。お代も結構だよ」

「ありがとうございます、ではご好意に甘えて」

「じゃあ俺も」

 昨日使った部屋に荷物を持って行き、シャワーを浴びて着替える。

 ……ドラゴンと戦ったなんて実感がまだ湧かない。夢中だったからな。

 熱で焦げ、土で汚れた制服だけがあれが現実だったと主張している。

「つっ……」

 どうやら何かの拍子に手を葉っぱかなんかで切っていたようで、切り傷がある。

 全然気づかなかったな。それだけ必死だったと言うことか。

「……よく生きてるよな、俺」

 ドラゴンを倒す時に使った魔法は、一歩間違えると自分も死ぬ大変危険なものだ。そんな魔法をよくミスもせず成功させたものだ。

 魔力を多く使えば使うほど小さなミスが致命的な結果を引き起こす。人間の域を超えた魔法となると尚更だ。

 切った手を軽くにぎにぎする。

 ……そして帰ったら、シラヌイ先生を問い詰める必要があるようだ。

 ドラゴンの事、知っていたのかどうかを。リゼにも手伝ってもらおう。

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