第50話

 魔法学院からの依頼とはいえ魔物の捕獲なんて大っぴらにするわけにはいかないので、俺達はただの観光に来た学院生のカップルであり、そのように振る舞ってくれと指示を受けている。

 即ち入れるための檻みたいな物は無いし、市民に見られる等何かあったら俺達だけで対処しないといけない。

 加えて大きな荷物は邪魔になるからと何も考えずに宿に置いてきた。流石にスライムを連れて宿に戻るわけにはいかないし、何方か片方だけで取りに行くか。

 馬車だけは学院が手配しているのだが、本日の夜にしか来ないと連絡も受けている。

 空を見てもまだまだ日は高く、夜の気配は全くない。

 つまるところ正直こんなに早く見つかるとも思っていなかったので、やる事がない。

 街に戻って観光をしようにもスライムを連れて行くなんてできないし、どうしたものか。

「んー、せめてスライムが目立たなければ良いんだが……」

 シラヌイ先生も無理難題を言ってくれるものだ。討伐だったらまだしも、極秘裏に連れて帰るのは難しすぎる。

 いくら人型とはいえ服を着ていないと人間社会では浮く。服を着ていても上着1枚だと浮く。服を買いに行こうにも学院の制服を着た俺やリゼがスライムのサイズに合う服を買うのは浮く。なぜ人類は服なんてものを発明してしまったんだろうか。服がなければスライムが人に化けて闊歩していてもそこまで不自然じゃないのに。……何だか変な方向へ思考が曲がっていってるな?閑話休題。

「っヘイン!なんかくる!」

 バカなことに思考を巡らせていると、突然リゼが叫んだ。

「なんだ!?」

「これは、かなり巨大な……魔物!構えて!」

「分かった!」

 いつでも魔法を発動できるように最新の注意を払う。既に例外指示は使用してある。

 リゼが急に叫ぶなんて、よっぽどの事だからだ。

「あ、ああ……」

 スライムがプルプルと震えている。

 俺達に見せていたのはまだ余裕があったんだな、と思えるぐらいに怯えている。

「あれが……くる……!」

 震える声でそう言った瞬間、その「あれ」が姿を現した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る