第48話

「着せたら言ってくれ、明後日の方向向いてるから」

「わかった。……見ちゃダメだからね」

「だめだからね!」

 リゼのセリフを反復するスライム。

 ……なんだか、最初よりスライムの発言が幼くなってないか?

 もしかして、恐怖で幼児退行しているのでは……と思ったがそれを口にするとリゼに魔法で嫌がらせされるから言わないでおく事にした。

 ……でもリゼってマインドリーディング俺には平気で使ってくるんだよな。ほら来た。なんか背中が熱いんだけど。やっぱり読まれてた。そして嫌がらせしてきた。

「あっづ!」

 背後で軽く爆発が起こり、その熱が服越しに伝わってきたようだ。

 火属性の爆発魔法だろうが、それは威力を抑えるのが非常に難しい魔法だ。リゼにもこういう芸当が出来たんだなとちょっと意外に思う。

「あらごめんなさい、寒いとおっしゃったから暖めてあげようと思いましたの」

「わざとらしい口調でわざとらしいセリフを白々しく言うな」

「おほほ」

 リゼは大貴族の一人娘で正真正銘本物のお嬢様だが、この口調だとものすごく違和感がある。似合わなさすぎて笑えるぐらいだ。

 まぁ、リゼは顔立ちが垂れ目で柔和な印象を与えるから、こんなつり目で高圧的で他人に嫌がらせをするようなお嬢様が使いそうな口調はあまり似合わないのかもしれない。

 中身の性格は貴族の令嬢というよりは庶民の方がよっぽど近いけどな。親御さんの教育方針なのだろうか?

 そのおかげで庶民の俺もこうしてリゼと気楽に接することが出来ているわけで、現状が嫌というわけでは全くないけどな。むしろこうなっていて嬉しい。

最近行動を共にする事が多かったからか、なんだかんだリゼと居ると落ち着く事に気付いた。俺の事情を全て知っている数少ない人間だし、気が許せる仲だからかもしれない。

 勿論シロノアやメリル、カレンとイーシアとも仲はいいし、気は許してはいるが、彼等の前では魔法の実力は隠している。カレンには片鱗を見せてはしまったとはいえ、基本的に俺の実力は黒ネクタイ相応だと思われているだろう。

 本当の意味での素の自分で接する事ができるのはリゼぐらいだ。もしもリゼが高飛車な性格に育っていたら、いくら幼馴染とはいえ今話す事も無かっただろう。もっとも、ここ数年は全く話して無かったわけだが。

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