第34話

「でも、どうしてまた魔物が現れたんだろう?」

「一応トゥーリェが根絶したとは言われているが、険しい山脈や深い森、果てしなく地下へと続く洞窟なんかにはまだ魔物が住んでる……正確には追いやられてるって話だしな。根絶したのはあくまで人間が住める範囲だけで、そういった端に追いやられたのが人里まで降りてきて現れてるんじゃないか?」

「なるほど、たまたま迷い込んでしまった個体だけど危ないから駆除するってことかな?もしそうならちょっとかわいそう……あれ、でもそれだったら私達に話くるかな?」

「確かにな、そこはおかしいと思っていた」

 何も魔法を使えるのは俺とリゼだけじゃない。この学院を卒業して魔術師として活躍している人はいくらでもいるし、国を守るために軍事力としての攻撃魔法に特化した国家魔術師だっている。

 一応、現在世界はこの国を主体とした統一の連邦になっているが、他の人間の国々やエルフの森林国家、ワーウルフの自治区なども存在し、一枚岩ではない。それぞれに高い自主権があるため、反乱が起きるとも限らない。そこで万が一に備えて各国ともある程度の防衛力は確保しているのが現状だ。

 もっとも1000年前の魔王討伐以降、そんな反乱は一度も起きていないので平和そのものではあるが。

「普通こういうのって国家魔術師が対処するはずだよね。どうして私達が退治しなきゃいけないんだろう?」

「……なんでだろうな。懲罰とはいえ、最悪死ぬかもしれない実戦に繰り出されるのはおかしい。何か裏がありそうだな」

 あの時の先生の態度から何かわからないか、と思い返して思い出した。

 リゼの様子が少し変だったな。

「ん?そういえばリゼ、あの時……トゥーリェの末裔がどうこうって話の時、様子が変だったが……この件と何か関係があるのか?」

「うん?ああ、えっと、それは全く関係ないかな」

「そうか。何か裏を知って俯いていたのかと思ってた」

「確かに凄く大事な秘密をあの時知っちゃったけど、魔物の件とは関係ないよ」

「わかった」

 表情を見るに凄く言いたくなさそうだから、詮索はしないでおく。親しい仲でもこういうのは弁えないとな。

 お互い無言になってしまい若干気まずくなったので、誤魔化すように頼んでいたコーヒーを手に取る。

 俺はコーヒーが好きなのだが、最近は飲もうとすると嫌がらせを受けちゃんと飲めていない。

 さっきまで暖かかったコーヒーが凍らされていたり逆にすっかり冷めたと思っていたのが熱々にされており軽く舌を火傷したとか、そんなのばっかだ。

 今回は何もされてないよな、と思い砂糖やミルクを混ぜる為のスプーンですくって確認する。うん、大丈夫そうだ。

 久しぶりの普通のコーヒーに若干感動を覚えていると、リゼが変なものを見る目で見ていることに気付いた。

「……コーヒー一杯でそんなに嬉しそうなヘイン、初めて見た」

「最近は魔法の嫌がらせでロクにコーヒーも飲めなかったからな」

「うわぁ……苦労しているんだね……」

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