第31話

「はあぁぁぁぁぁぁあああぁ……疲れた……」

 放課後、件のカフェでリゼと二人。俺は長い息を吐いた。

 あの日から一週間。周囲が新学期にも徐々に慣れていく間、俺はひたすら陰湿な嫌がらせを受け続けていた。

 一つ、トイレに入っていると急に上から水が振ってくる。(水魔法)

 一つ、食堂で食べようとした食事が丸焦げにされる。(炎魔法)(食べ物を粗末にするな)

 一つ、外を歩いていると突然ものすごい逆風に襲われる。(風魔法)

 一つ、歩いていた道が突然泥道になり足を取られる。(土魔法)

 一つ、金属に触れる度に静電気でバチンと痛みが走る。(雷魔法)

 後は道を歩いていると露骨に舌打ちされるようになった。リゼ人気すぎだろ。

 ちなみにとばっちりで行動を共にする事が多いシロノアも舌打ちされてた。あいつも黒ネクタイなのに白ネクタイの美人と付き合ってるからな、婚約者とはいえ。

「な、なんだかごめんね……」

「いやまぁ大した事されてないからいいんだけどさ、リゼは大丈夫だったか?」

「私は特に。シアも居るしね。クラスメイトの女の子から質問攻めにされたぐらいかな」

 リゼはそれに何て答えたのだろうか。嫌な予感がするから知りたくないが。

「大丈夫、最後の一線はまだ超えてないって言ってあるから」

「全然大丈夫じゃねえよ!俺達何の線も超えてねえだろ……」

 ……日に日に嫌がらせが増していったのは、リゼのせいな気がしてきた。

「それで、何か進展は?」

「あぁ……特に何も。毎日顔合わせてるけど、何も言われてないな」

 禁術を使用したことの懲罰として魔物退治を命令されたものの、肝心の詳細がまだ伝えられていない。

 担任であるシラヌイ先生とはほぼ毎日顔を合わせるし、寮長でもあるからそっちでも会うが特にその件について言われたことはない。

「忘れられているとか?」

「ありえないだろ。流石に」

「それもそうだよね」

 それにしても魔物退治か。

 魔物は、かつてトゥーリェによって根絶されたと言われている。

 昔この世界を支配していたのは魔王率いる魔物達で、人類はわずかな土地にて小国を築いて生きていた。

 そんな人類もとうとう魔王に攻め込まれ、あわや滅亡の危機といった情勢になった時、小国のある王子が人類を救うために他の世界から召喚したとされる魔法使い。それがトゥーリェだった。

 トゥーリェはその類まれなる魔法の才能により魔物を圧倒し、攻め入っていた魔王軍を討ち滅ぼし、その過程で魔物を根絶やし、最終的には魔王をも倒し世界の支配権を白紙に戻した。

 当時人類以外にもエルフやワーウルフと言った亜人のような知性を持った生物は存在したが、エルフは森から出たがらず、ワーウルフには世界を支配するだけの知能は無く、

他の種族は支配できるほどの規模がなかったため、人類が世界を支配することとなった。

 結果としてかつて魔物が住んでいた場所の開発が進み、人が住みやすいところは殆ど人間の支配地域となった。

 そして現在に至り、今では世界中に人類が進展し、交通網を築き上げている。

 一応、トゥーリェも魔物を絶滅させることができたわけではなかったようで、現在でも人類が居住するには適さない地域にて少数の魔物の存在が確認されてはいる。

 しかし、最近そんな魔物が人の居住地域に近い場所でも目撃されている。

 実際、4年次の林間実習では俺とカレンのペアの前に魔物が現れ、交戦したことがある。

 カレンは全属性の魔法が使えるが全て初級魔法しか使えず、戦闘には向かない。そこで仕方がなく久しぶりに本気を出して、俺が討伐した。

 シラヌイ先生が言っている実績とはこの事だ。

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