第30話

「……それで、お前らどうするんだ?」

「どうする、とは?」

 シロノアが立てた人差し指をおでこにあて、ため息を吐いた後にたずねてきた。

「噂の真偽だよ。仲良くしてても騒がれるし、逆に距離を取っても怪しまれたり、或いは何かあったんじゃないかと余計に騒がれたりな。有名人は大変だな」

「私的には噂なんて気にしないで、今まで通り普通に接するのが良いと思います」

「そうだね、ボクも今まで通りの方が良いんじゃないかなって思うよ。……今までというのは、ヘインとリゼリアがあまり話していなかった頃のことね」

 カレンとメリルの言い分はこうだ。一理ある。

「確かに、急に今日からよく話すようになったことも噂に拍車をかけているかもしれませんわね」

「第五学年に上がる時になにかあったんじゃないかって噂も聞くしね。そういうことだと思うよ」

「……ヘインさん、本当に何もしていませんよね?」

「してないって」

 カレンにジト目を向けられる。彼女にこんな目を向けられたのは初めてだ。

「まぁ、これは本人達の問題だからな。ヘイン達がどうするかは、俺達で決めることじゃないな」

「それもそうだな……」

「そうだね。……ちょっとお茶でもしながら話そうか」

「了解」

 リゼが俺の手を取り歩き始め、こっち、と言わんばかりに引っ張る。

 それに従い歩きつつ、後ろを振り向いて「じゃあまた明日な」とみんなに声をかける。

 そんな俺とリゼを見送るメリルは、なんとも形容しがたい顔をしたカレンの肩を叩き、

ぷるぷると首を横に振っていた。なんだろうか。 

 二人で学院内にあるカフェに入ると、俺達に気付いた店内の客の一部から黄色い歓声が上がった。うぅ、これは思ったより恥ずかしいな。一部舌打ちが聞こえた気がしたが無視した。

 店内はネクタイの色が決まったばかりともあり、主に第五学年で同じネクタイの色をしたグループが多く見受けられる。懇親会とか、そのような役割を持っている茶会なのだろう。

 非常にやりづらさを感じながら俺はコーヒーを、リゼは甘いミルクティーを頼み、リゼがなぜか空いていた――おそらくそこに居た人達が気を利かせてどいた、窓際の明るい席を見つけ、そこに座る。

 周りにすごく注目されていることを嫌というほど感じながら、リゼと今後について話し始める。

「それで、(今後)どうする?(俺達が)付き合ってるって(噂が)、大分広まってるみたいだけど」

「ここまで広がっちゃったなら仕方がないと思う。(下手に噂を否定して)騒がれるぐらいなら、もう付き合ってる(フリをしてる)のを見せつけて好きなだけ騒がせて飽きさせようよ」

「そうだな」

「でももし、私に(周囲が)飽きたら別れてもいいよ」

「リゼに(これまでの人気から考えて周囲が)飽きるわけないだろ」

「そ、そうだね……」

 久しぶりに話したとは言え、かつて一緒に師匠の修行を受けた仲だ。これぐらいの意思疎通は目配せだけで出来る。

 でもなんだかリゼは顔が弱冠赤い。なんだ、変な感じに受け取ってしまったか。

 結局、こういった噂は否定すると余計に騒がれて面倒になると二人で話し、二人でしばらく恋人ごっこをすることになった。

 結論も出たし今日は帰るか、と店を出た矢先。

「……これからも末永くよろしくね、相棒」

 斜陽に向かって歩き出したかと思った瞬間振り返ったリゼが俺に耳打ちし、にっこりとほほ笑んでそう言った瞬間、カフェ中が黄色い歓声に包まれた。

 おいそれ、どういう意味だ。

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