第29話

「ヒューヒュー、お二人さん、お熱いねぇ……っと、冗談だよ。冗談だって。許してほしいな、謝るから。ごめん」

 茶化しながらメリルまで現れたので、少し怒りを込めた目を向けたら謝られた。そんな怖い顔してたか、俺。

「どうしよう……ごめんねヘイン、私が誘ったせいで」

「いや、それはまぁ……うん……すまん、フォローしようと思ったけど完全に俺とばっちりだよな。誘ったのも魔法失敗したのもリゼだし」

「うぅ……」

 しかしまぁ、俺とリゼが付き合ってるという噂が流れている、ねぇ。

 別にこの学院では男女の交際が禁止されているわけではない。恋愛事も魔法の鍛錬のきっかけになる場合もあるし、なによりも貴族の嫡子や令嬢が集うここでは、婚約者を見つける為に最適な場となっており、そういった目的で交際をするカップルも非常に多い。目の前のシロノア達とかな。

 いや、こいつらは自分達では付き合ってないと思っているみたいだが……傍から見るとどう見ても恋人どうしだ。むしろ恋人を通り越して既に夫婦だ。

「んー、でもさ、俺とリゼが付き合ってるって噂が流れてるぐらいじゃ別にいいんじゃないか?ほっとけばいいだろ」

「まぁ普通は学院のマドンナに恋人が出来たと騒ぐ程度だろうが、今回はお前が黒ネクタイだからな……以前から婚約者だと公表している俺とイーシアはともかく、お前達が付き合うなんて何かがあったんんだと思われてるんだろうな」

「具体的には、『何か変な魔法を使ったんじゃないか』とか、『弱みでも握られてるんじゃないか』とか、『おのれ黒ネクタイの分際で俺のリゼ様を催眠で誑かしやがって』とか、『野郎新月の夜には背後に気をつけろよ』とか、『末代まで呪ってやる』とか言われてるみたいだよ」

 おいメリル、なんだその伝言は。後半なんか物騒だし。

「というかお前ら、一体何したらこんなことになるんだ?」

「えーっと……」

 どうしようか。転移魔法に関しては他言するなと言われてるしな……。

「私が魔法で失敗しちゃってヘインがケガしたから、中庭でヒールかけてただけなんだけど……」

 リゼが代わりにそういった瞬間、4人の動きがピタッと止まる。

「……ねえ、もしかしてだけどリゼ、あなた」

「……『中庭で異性にヒールをかけると結ばれる』って伝説、知らないのか?」

「転じて、中庭で異性にヒールをかけるのは愛の告白だって言われてるね」

「数百年続く、ある種の伝統とまで言われてますよ!?」

 4人が説明してくれた。その伝説、初耳なんだが……。

「えぇ!?何それ!?」

 リゼも同じく知らなかったようだ。というかそんな伝説があるなら、そりゃ見られるよな……下世話な視線も送ってくるよな……。

「あー、やっぱり……知らなかったのね……結構有名な話だけど、リゼってどこか抜けてるところあるからもしかしたら知らないんじゃないかって思ったわ」

「女子にとって憧れの告白ランキング第二位ですよ、もっとも相手が回復魔法が使えることが条件なので難易度は非常に高いですけど……」

 一位はなんだろう。ちょっと気になる。

「まぁ、本来は男性が女性にヒールをかけて愛の告白をするのが一般的なんだけども……逆は逆で珍しくて話題になるし、仕方ないわね」

「それに相手は黒ネクタイだからなぁ。なんというかまあ、騒ぐなって言う方が無理だよな」

「ともかく、リゼはともかくヘイン、気をつけなさいよ。同学年と若干の他学年の男子、一部女子までもが貴方に嫉妬の炎を燃やしているわよ」

「ねぇシア!?ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど!?」

 リゼがイーシアにつっかかるが、真顔で意に介せずって感じで腕を組んでいる。

 それにしても、めんどくさい事になった……。

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