第74話 つい、やりすぎちゃうんだ!


 めでたくルナさんが仲間入り!

 全財産が一旦俺の懐に入ったわけだが、装備品すぐに全部お返しした。

 アルスは200億ほど公爵家の財布に組み込まれてしまったけど、ルナさんの分だと考えて別口にしておこう。


「よし! 一丁暴れてみっか!」

「はい!」


 そんな戦闘民族的なノリで地上に出る。

 これでルナさんがデスるのを心配することなく、全力で打ち合えるぞ!

 血の気の多い領民達もゾロゾロついてきた!


「おーし! じゃあいくぞー!」

「はーい!」


 俺はいつもの淑女ドレスを着て、手持ちの武器で最強と思われる大金槌(1トン)を装備した。


「うおっ! えげつねえもん持ってるね!」

「生産にも使える便利ものです!」


 そして月明かりの下で、激しくルナさんと打ち合った。


「うおおおおおー!」

「でええええい!」


――ガキーン!


 ドラゴンテイルズと大金槌が火花を散らす!


「はああああああー!」

「うりゃああああー!」


――バキーン!

――ズゴーン!


 力は互角!

 だが!


「ふっ! 遅いね!」

「ぬわっ!?」


 ルナさんは一瞬で俺の背後に回ると、必殺技で激しく切りつけてきた!


「ガル・ウィング!」


――ズバズバ!


 左右交互の二連撃に、俺の背中が引き裂かれる!


【ルナから2391のダメージを受けた】

【ルナから2343のダメージを受けた】


「ぐわあああー!?」


 ムチ打ちほどではないが、鋭い熱痛が背中に走る。

 装備が薄いからダメージが直でくるな!


「うおおおお!」


――ブウン!


 思いっきり大金槌をふりまわすが、虚しく空を切る!

 だめだ! 武器が重すぎて速度がでない!


「ならば!」


 肉を切らせてなんとやら!

 俺はルナさんの攻撃をあえて受けた!


【ルナから1203のダメージを受けた】


「うおおおおお!」

「わあお!?」


 そこに大金槌をぶち込む!


――ドフー!!


【ルナに1304のダメージを与えた】


「おわー!?」


 錐揉み回転しながら吹っ飛んでいくルナさん。

 ダメージもかなりでた!

 やはりビキニアーマーは、防御力はあまりないようだ。

 機動力を重視して、ヒットアンドアウェイで戦うための装備なのだろう。


「なら俺だって!」


 俺は大金槌を捨てて、代わりに金の塊を両手に持った。


「はああああー!」

「むむ!?」


 これでルナさんと同じスピードファイターだ!

 俺は容赦なく拳の雨を降り注がせる!


「おらおらおらおらおらおら!!」

「くうっ!?」


――ガキキキキキキキキン!


 ルナさんはドラゴンテイルズを器用に使って、俺の拳を弾いていく。

 だが――!


「そこだぁあ!」

「!?」


 防御が上がったところを見計らって、屈み込みながら強烈に踏み込む!

 そしてボディ!


――ボコォ!


【クリティカル! ルナに450のダメージを与えた】


 クリーンヒット!


「ふうんっ!♡」

「えっ!?」


 だがルナさんは、どこか気持ちよさそうな声を上げた!


「良いパンチじゃねーか!」

「しまった!」


 痛覚耐性Sなんだった!

 そして油断した!

 大上段からの一撃が飛んでくる!


「とああああ!」

「ぐほー!?」


【クリティカル! ルナから4930のダメージを受けた】


「あががががー!?」


 脳天に強烈なのを打ち込まれて、一瞬意識が遠のく。

 景色がぐにゃりと歪んで、自分がどっちを向いているのかわからなくなる。


「ドラゴニック!」


 そして最強技が来る!


「ブレイク!」


 だが!


「ぬうううううん!!」


 俺は腹の底に力をこめ、襲いくる刃に対して自ら飛び込んでいった!


「はあああああ!」

「ひょ!?」


【クリティカル! ルナから8939のダメージを受けた】


 激しすぎるダメージエフェクト!

 全身を灼熱の業火が襲うが!


「ふうんっ!」


 がら空きになったルナさんのジョー(顎下)をめがけて、渾身の拳を振るった!


――ガクンッ!


【カウンター! ルナに892のダメージを与えた】


「ぶぐっ!?」

「うおおおおおお!」


 頭部に強い打撃を受けると、視点が強烈にブレるせいで、目眩に似た状態になる!

 いまだ!

 たたみかけろ!


「おらおらおらおらおらおら!!」

「ぬわあああーー!?」


――ボコボコボコボコボコボコボコ!


【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】


 普通ならデスっているダメージ!

 だが俺は手を休めない!


「おらおらおらおらおらおら!!」

「ぐががががが!」


【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】

【ルナに312のダメージを与えた】


「ぬおりゃあー!」


 トドメとばかりにアッパー!

 王太子すら撲殺したゴールデンアッパー!

 略してOBGアッパアアアー!


――ドゴン!


「ムグッ!?」


【ルナから392のダメージを受けた】


 だが!

 逆にダメージをくらったのは俺だった!


「が……は……」


 なんと俺のアッパーが届くまえに、ルナさんのつま先がみぞおちに食い込んでいたのだ!


「ふん!」


 そのままルナさんは、俺の腹を踏み台にするようにして飛び上がると、左右の脚で俺の顔面を二度蹴った!


「ぐはっ! ぐほっ!」


【ルナから230のダメージを受けた】

【ルナから223のダメージを受けた】


 そして俺が目を回している間に――。


「ドラゴニック・ブレイク!」


――ズゴゴゴゴーン!


 凄まじい熱波が、俺の全身を突き抜けた!


【ルナから10293のダメージを受けた】


――ビリビリビリー!


「ぐわああああー!?」


 淑女ドレスがビリビリに引き裂かれ、見事に吹き飛ばされた俺は、そのまま地べたに墜落した。


 K.O!!

 YOU LOSS!


 そんな字幕が見えた気がした。


 格ゲーか!



 * * *



(やべえ、勝てる気がしない……)


 ノックアウトされた俺は、今は領民達を相手に戦っているルナさんの姿を見ていた。


――はああああー!

――ズッシャーン!

――グワアアアアー!


 ルナさんの一振りで、何十人もの村人が一気に吹き飛ぶ。

 合計ダメージは1万を超えていて、俺のHPゲージまで1割ほどガリッと削れるほどだ。


(鬼に金棒……)


 まさに、この例えがしっくりくる。

 竜人を超えた力を持っているということは、並みのNPCでは束になっても敵わないということだ。

 唯一の弱点がHP量だったと思われるが、白金の絆によってそれを克服した今、ルナさんは最強の戦士になったと言える。


 本当に、並みのNPC相手ではどうにもならないだろう。

 並みであれば……。


『『『『ファイヤーボール!!』』』』

『『『『ウィンドカッター!!』』』』

『『『『サンダーボルトー!!』』』』


 100名を超える村人たちが一斉に魔法を解き放つ。

 しかもみんな、市販されている中で最高級の魔法杖を装備している。

 先ほど領のみんなに、1人2000万アルス、合計で136億アルス分の資金を配ったところ、すぐに武具の購入に当ててくれたのだ。


 そしてそのダメージは――。


「ウニャアアアアン!!♡」


 ルナさんに人外の咆哮を上げさせる程であった!

 俺のHPゲージがさらに1割削れたことから、その合計ダメージはやはり1万を超えていただろう。


「こ……これ! これをあたしは求めていたんだあああ! ドラゴニック・ブレイクウウウ!!」


――ズッシャーーン!!

――ワアアアアアイ!!


『『『『ファイヤーボール!!』』』』

『『『『ウィンドカッター!!』』』』

『『『『サンダーボルトー!!』』』』


「ハニャアアアアアアアン!♡ どりゃごにっく・ぶりぇいくうううぅぅ!!」


――ズッシャーーン!!

――フヒャアアアアア!!


『『『『ファイヤーボール!!』』』』

『『『『ウィンドカッター!!』』』』

『『『『サンダーボルトー!!』』』』


「アヒイイイイイン!!♡ どりゃごりゃあああー!!♡」

「やめー!!?」


 俺のHPは残り2割よー!?

 バカー!!


 それから俺は、みんなを叱ってまわった!


 滅ぶ気かー!!

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