第71話 究極の選択!


 ルナさん奴隷化の話はひとまず置いといて、俺はみんなとメッセージを読む。



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 オトハ・キミーノ公爵令嬢 様


 初期クエストクリア、おめでとうございます。

 わたくし、竜人同盟盟主のレイア・イーグレットともうします。


 僭越ながら、オトハ様の婚約破棄動画を見させて頂きました。

 類まれなる婚約破棄の展開、そしてオトハ様のご勇姿。

 まさに、心震える思いにございました。


 さて、竜人同盟への加入をご希望とのことですが、結論から申し上げます。

 現時点では、オトハ様の所領を当同盟の庇護下に置くことは考えておりません。

 すでに、侵略者への対応に苦心しているかとは存じますが、何卒ご容赦を。


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「おおう……」


 やっぱり駄目だったか……。

 何となくわかってはいたもの、改めて言われるとガックリくる。


 ひとまず続きを読む。



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 しかしながら、オトハ様の王太子撲殺の偉業に、多くの加盟員が強い感銘を受けております。

 ご存知かもしれませんが、同盟に属する多くの令嬢達が、かの傲慢王子に本気で泣かされるという憂き目にあっております。私達のその鬱憤を、オトハ様は見事に晴らされたと言えるでしょう。

 多少の異論はあるものの、私どものオトハ様への感情は、概ね好意的であると受け取って頂いて結構です。


 つきましては一点、こちらが提示する条件をお飲みいただけるのでしたら、私どもとしては、オトハ様の同盟加入に向けた手続きを進めたいと考えております。

 どうぞよくご検討なさって、悔い無き返答を頂ければと存じます。


 条件は以下の通りにございます。


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「えっ……」


 俺はその下に書かれていた条件を読んで絶句した。


「まあ!」

「ふうーん……」


 その場にいた人の多くが唖然とした、その条件とは――。



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『ルナ・エバーフォールの永久国外追放』


 以上にございます。


 竜人同盟盟主 

 レイア・イーグレット


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「そんな……!」


 俺はすぐにルナさんの方を向く。


「やっぱそうきたかー」


 だがルナさんは、どこか達観した様子だ。


「な、仲悪いんです!?」

「そりゃあ、あたしは『竜人殺し』だ。あの同盟に襲撃をかけたことなんて一度や二度じゃない」

「えええ!?」


 ルナさんは基本的にソロプレイのようだし、単騎で同盟に喧嘩売ったということか! 大軍勢で攻めても歯が立たないって話なのに!


「もちろん、同盟内の竜人を倒せたことは一度もない。流石のあたしも、数百頭の竜を相手にすれば一瞬でデスっちまうしな」

「なんでそんな無茶を……!?」

「さあな、あたしの中の竜がうずくとでも言っておこうか……ふふふ」

「ええ……!?」


 絶対何か真意がある!

 でもここは、あえて踏み込まない方が良いのかも……。

 なんかそんな雰囲気だ。


「で? どうするんだい? あたしと同盟、どっちをとる?」

「ううっ!?」


 そして究極の選択だ!

 ジャスコール王国の運命の分かれ道……。

 竜人同盟か、竜人殺しか。

 とーちゃんの持っている某有名RPGにも、こんな究極の選択があったような。

 

 ただAROはオンラインRPGで、全てのシナリオ分岐をプレイするなんてことは出来ない。

 まさに『数多ある可能性』の1つを選び続けて、ただ一つの人生を歩まなければならない。


(う、うおおおお……!)


 これは大変だ、どうしたらいい……。

 ゲームだけどゲームじゃない。

 本気で俺とルナさんと、そして領のみんなの人生がかかった選択だ! 


(ううーん!)


 ここはやはり、みんなの意見を聞くべきか?

 一部の領民や使用人達は、すでにルナさんと仲良くなっている。

 メイド達なんて、一緒にお風呂に入ったくらいだし……。


(いや……だめだ!)


 これはきっと、俺自身が決断すべきことだ。

 それも、今すぐに!


 特にハッキリとした根拠があるわけではないけど、ここで判断に迷っちまうようなら、それだけで俺は『大切な何か』を失ってしまう気がする……!

 何となくだが、そう思う!


「えーと……俺は……」


 だから俺は言うことにした。

 しばし呼吸を整えて、感じたままの結論を述べた!


「もちろん、ルナさんを選びます!」

「オトハさま!」

「マジかい……!?」


――おおおおおおー!

――んまああああー!


 サーシャとルナさんが目を丸くした。

 そして領民達の間から歓声があがった。


 そうだ。

 ここでルナさんとの縁を切るのは、言わば仁義に反することなのだ。

 迷うことさえ許されないのだ。


 竜人同盟の人達とはまだ会ったこともないけれど、ルナさんとは、すでに多くの思い出を共有している。

 言うならばすでに『仲間』なのだ。


 せっかく出来た仲間を見捨てて、俺は一体、何を得ようと言うのだろう!


「そんなに……ルナ様を奴隷にしたいのですね!」

「えっ!?」

「ヤベえ、流石にキュンときちまった……」

「えっ、えーっ!?」


 だが!

 話はなんか変な方向に!?


――さすが領主さま!

――男だあああああ!

――男ですわあああ!


「ええええーっ!?」


 うおおおおおお! 何でそうなるー!?


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