第13話 例の緑色のやつ


「ワンワンワンワンワン!!」

「どうした! 先生!?」


 10メートルほど斜めに掘り進めたところで、ベンジャミン先生がけたたましく吠え始めた。


「ワンワンワンワンワオーン!!」


 用心深い先生がこれほど吠えるということは、掘り進めた先には何か危険なものがあると言うことなのだろうか?


「どうすればいいんだ……」

「ワオーン!」


 君子危うきに近寄らず?

 それとも、危険があるなら潰しておくべき?


 俺は少し迷った後に、慎重に穴を掘り進めていった。


「ワフン!」

「うお!?」


 あるところまで来た瞬間、土の方が勝手に崩れ出した。

 向こう側には別の空洞が出来ていて、どうやらそこと繋がったらしい。


 そして……。


「ウゲ!?」


 その先には、手にツルハシを持った緑色の生物がいたのだった。


「げっ!?」

「グゲゲェ!?」

「ワンワンオーン!」


 人の形をした醜悪な生物。

 俺はそれを見た瞬間、反射的に殴りつけていた。


「うわあああ!」

「グケー!?」


 拳に走る鈍い感触。

 謎の緑生物は、洞窟の奥へと吹っ飛んでいった。


 あれは……いわゆるひとつのゴブリンってやつでは?

 なんでこんなところに!?


「ベンジャミン! ホーム! ゴーホーム!」


 危険を感じた俺は、すぐさまベンジャミンに、屋敷に戻るように指示を出した。


「ワ、ワフン!?」

「ゴーホーム! いや、ハウスだったか!? ハウース!」


 たじろいだまま動こうとしないベンジャミンに、改めて強く指示を出す。

 すると先生は、尻尾をブンブンとふりながら、一目散に屋敷へと駆けて行った。


 緑色の生物は、見える限りで3匹いた。

 背の高さは120cmぐらいとかなり小さく、餓鬼のように下腹がでっぱっている。

 しかしその腕の太さはなかなかのものだ。

 手には武器となるものを持っているし、恐らくは知能もあるのだろう。


「グギャギャ……」

「グゴググ……」


 大人が一人歩いて通れるくらいの洞窟の中、赤い瞳をギョロギョロさせながら、ゴブリン達がにじり寄ってくる。

 暗くてよくわからないが、穴は地底の奥深くまで続いているらしい。


「くっ……」


 どうする?

 戦って勝てる相手なのか?

 ここは一旦引くべきなのか?


 そんな風に俺が迷っていると、向こうから先に仕掛けてきた。


「グギャギャー!!」

「うおわああ!」


 とっさに拳を振るって殴り飛ばす。


――ボコォ!


【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】


「グエーッ!」

「うお! 効いている!?」


 凄いぞ、俺の拳!

 もう既に立派な武器になっている!


「よし! ならば!」


 徹底的にやってやろうじゃないかー!


「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


 昔、とーちゃんの書斎で読んだ漫画を参考にして、あらん限りの力と速度でパンチを繰り出していく。

 腰を落として上半身を安定させ、あらゆる角度からゴブリンに拳をぶち込んでいく。


「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

「グギャゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!」


 ビシバシボコスカと軽快な打撃音を鳴らしながら、ゴブリン達の身体を押し込んでいく。


「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


 さらに壁際に追い詰めて、滅多打ち!


【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーを倒した。59の経験値を獲得した】


「よし! 一匹!」


 行ける! 行けるぞ!

 ブラウンベアーより全然弱い!


「ぐぎゃー!」

「いってー!」


 だが油断している隙に、背中にツルハシを叩き込まれた!


【ゴブリンワーカーから25のダメージを受けた】


「このやろー! オラオラオラオラオラオラオラオラ!」

「グギャゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!」


 反対側の壁に突き飛ばして、再び滅多打ち。


【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】


 ああ、拳で戦うとシステムメッセージがうざいな!

 だがもう、俺の拳は止まらんのだよ!


「グゴエエー!」

「うっ!?」


 なんと、もう一匹は短剣をもっていやがった!

 壁際に追い詰めた一匹に気をとられているうちに、脇腹にブスリと突き刺される。


「うがああああ!」


【ゴブリンワーカーボスから49のダメージを受けた】


 たまらず脇腹を抑えてよろける。

 やばいやばいやばい!

 下着同然の姿だから防御力が紙すぎる!


「フル・セルフ・ヒール!」


 満タンまでHPを回復させる時の詠唱をする。

 セルフ・ヒールの上位魔法みたいなのは存在しない。

 回復量は純粋に、魔力と消費したMPの量で決まってくるのだ。


「ぬあああ!」

「グゲー!?」


 なんとか痛みをこらえて、ワーカーボスとやらを蹴り飛ばす!

 そして再びオラオラオラオラオラ!


【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーに5のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーを倒した。59の経験値を獲得】

【ゴブリンのツルハシを入手した】


 そして最後の一匹、ワーカーボスに立ち向かう。


「ホアアアアア!」


 特に意味はないが、両腕を前方でぐるりと回転させて気勢を吐く。

 オトハは気合を溜めた!

 今度は別の漫画の叫びを参考にしながらぶん殴る。


「アータタタタタタタタタタタタタタタタ!」

「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」


 やっていることは同じなのだが……。


【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】


「うおおおおおお!」


 堅い! さすがボス! 強い!

 だが負けない!

 休まず拳幕を張り続けて、相手の攻撃を許さない!

 叩き続ければいつか倒せるぞ!

 うおおおおお!


「アーッタタタタタタタタタタタタタタタタ!!」

「ブベベベバベベベベベベベブベベベベ!!」


【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスに4のダメージを与えた】


「ほあたぁ!」


【クリティカル! ゴブリンワーカーボスに12のダメージを与えた】

【ゴブリンワーカーボスを倒した。経験値110を獲得】

【ゴブリンナイフを入手した】


「おっしゃああー!」


 なんかようわからんが、のりきったー!


――ピシャーン!


 すると突如、俺の両拳から光が溢れ出した!


「なんだ!?」


【中級モンスターを素手のみで倒しました。称号『拳豪』を獲得しました】

【称号を初めて獲得。経験値5000を獲得しました】


 剣豪ならぬ、拳豪!?

 なんだかよくわからんけど、やったぜ!


【称号『拳豪』、格闘系スキルを閃く確率が倍増】


 なるほど、それは素晴らしい!


「ハアハア……しかしこの穴……」


 ゴブリンの巣にでもつながっているんだろうな。

 ベンジャミンのお陰で早期発見できたわけだけど……。


 これは……婚約破棄なんてやっている場合じゃないぞ!?



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名前 オトハ・キミーノ

身分 公爵令嬢

職業 戦士

年齢 17

経験値 6439


【HP 100→108】【MP 35】


【腕力 28→30】【魔力    14】 

【体幹力17→20】【精神力19→20】

【脚力 20→22】


【身長 175】 【体重 62→60】


耐性   恐怖D 刺突D

特殊能力 経営適正D 回復魔法D 宝石鑑定D

スキル 猛ダッシュ 生産(宝飾)D 吠える スタンハウリング 掘る

称号 拳豪(new!)



装備

 絹の下着

 ドロワーズ

 革のブーツ


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