情景と雰囲気、仕掛けとテーマの厚みが魅力的なゴシックファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
本作を読んでまず印象的だったのが雰囲気作りでした。
回廊を渡る足音、月光に照らされる中庭と薔薇、夜の礼拝堂に鎮座する祭壇など、それらが視覚だけでなく、軋む音や空気の冷たさまで想像させ、ゴシックファンタジーとしての空気を最初から最後まで濃密に保っていました。血や儀式の描写も単なる残酷表現に留まらず、読者を惹きつける見せ方が非常に巧みでした。
また、教会の厳格な序列や権威、魔導書を巡る統制と利権、魔女と魔法修士の立場の違いといった要素が、宗教・政治・魔術の三層構造として整理されており、事件が単なる怪異ではなく、必然として起きていることを納得させられました。この緻密さが、修道院という閉鎖空間に不穏な説得力を与えています。
さらに、ミステリとしての仕掛けも非常に効果的だと思いました。様々な手掛かりが序盤から自然に配置され、ホラーと幻想の皮を被りつつ、その内側にはミステリの骨格があるという造り方が見事でした。