修学旅行の日程表


 ……きたっっっっ……

 クリームヒルトさんとフランソワーズさんは、内心このように思ったのです。


 その紙は、先生から渡された修学旅行の日程表です。

 ヴァランティーヌさんはこの日程表を眺めながら、クリームヒルトさんとフランソワーズさんに、修学旅行の話をするのです。


 この話、もう一週間は続いているのですから、たまったものではありません。

 

 日程表によれば、一泊二日の京都旅行。

 ホテルは市内にあるランドマークタワーの建物内のホテル。

 小学校としてはいいほうですね。


 朝八時三十分に学校からバスに乗り、九時前の新幹線に乗り、十時すぎに京都駅へ。

 『京の花街【宮川町】で舞妓さんと和食ランチ』などという観光バスコースを経ててホテルへ。


 翌日、一日中自由行動で、班単位で京都をめぐって午後四時に京都駅で集合、新幹線に乗って、駅前で解散となっています。


 なんでも班に一人、先生がつくらしいのです。

 そんなわけで修学旅行中は、聖ブリジッタ女子学園山陽校付属女子小学校はお休みになります。

 先生が大挙していなくなるからです。


 京都をめぐる班は、四人でひとつの班とし十班、先生を含めて合計五十名、班ごとに五人乗り中型タクシーを貸し切りで調達するそうですよ。


 ヴァランティーヌさんが、

「ねぇ、清水寺って綺麗なの?」

 とクリームヒルトに聞いてきました。

 フランソワーズさんはそのあたりは疎いので、クリームヒルトさんに聞いてくるのです。


「私、あまり知らないけど、紅葉の名所ってことよ」とクリームヒルトさん。


 するとヴァランティーヌさんが、

「あのね、京都の紅葉ってね、十一月の下旬よ、まだ早いわ、クリームヒルト姉さま、知らないんだ」

 その後、怒涛のような清水寺の説明が飛んできました。


 翌日、クリームヒルトさんは乙女さんと京子さんに愚痴をこぼすと、京子さんが、

「それ、まだ良いほうよ、家なんか明子が鯖寿しの話を持ち出したのよ!信じられないわ、鯖寿しよ!」


 乙女さんが、

「やはり仕出し屋さんの娘ね」

 と感心していましたが、京子さんは、

「それよ、お姉ちゃんは鯖寿しも知らないの、家は仕出し屋よ、勉強が足りないわ、なんていうのよ!」


 乙女さんは、

「うらやましいわ、妹がいるなんて、楽しいでしょうね」

「うるさいだけよ、妹なんて!」と京子さん。


 クリームヒルトさんが、

「その割にお京ちゃん、この間、京都観光の本を買っていたじゃない?」


 京子さんは、

「それは……明子が迷子にならないように、迷惑がかからないように……」

「お京ちゃん、やはり妹が可愛いんじゃないの」と乙女さん。


 京子さん、ここで強引に話題を変えます。

「それにしても初日の『京の花街【宮川町】で舞妓さんと和食ランチ』ってすごいわね」

「とても小学校の旅行のコースとは思えないわ、たしか生徒の望みで決まるはずだけど、誰が言い出したのかしら?」


 クリームヒルトさんが恥ずかしそうに、

「それ、ヴァランちゃんなの……まったく恥ずかしいわ……」

 乙女さんが、

「ヴァランちゃん、おませだから、舞妓さんに会いたかったのよ」


 確かにヴァランティーヌさんは、何としても舞妓さんに会いたかったのです。


 クリームヒルトさんが、

「ヴァランちゃんと明子ちゃん、同じ班だったわね、自由行動はどこへ行く気かしら、聞いていない?」


「明子、金閣、銀閣、清水寺って、云っていたけど……」と京子さん。

「えらく欲張っているのね」とクリームヒルトさん。


 でも、どうやらヴァランティーヌさんと明子さんの主目的は、地主神社(じしゅじんじゃ)のようなのです。

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