オルゴール通信


 静子さんが「いくいく!」と、二つ返事です。


 クリームヒルトさんが、

「大部屋って八人部屋なの、でね、悪いけど私ね、こちらの友達を二人連れて行こうと思うの」

「皆もそちらで友達が出来たと思うのよ、だから二人ほど連れてきて、友達の友達って友達でしょう?」


 ここで町子さんが、

「クリちゃん、皆も、お願いが有るの、一人一緒に行きたい人がいるの、皆も知っている人と思うけど」

 美千子さんが「誰なの?」と聞きますので、

「浮田京子さん……」

「お京ちゃん、隣のクラスだった?」

 と、静子さんがいいました。


 クリームヒルトさんが、

「マチちゃん、お京ちゃんはね、お友達になったのよ、だからね、呼んでいるの、皆もいいでしょう?」


「お京ちゃんなら賛成よ、だってね……よかったわ」

 と美千子さんがしみじみいいました。


 クリームヒルトさんが、

「マチちゃん、今ではお京ちゃんはね、釆女さん、つまり梓巫女(あずさ巫女)なのよ、お祓いしたので大丈夫なの、代価は釆女さん、お母さんも妹の明子ちゃんも一緒にね♪」


「お京ちゃんは知っているの?」と町子さん。


 クリームヒルトさんが、

「この間、釆女さんに昇格した時、蓬莱ステーションに呼ばれてね、そこで私から洗いざらい知らせておいたわ」

「お京ちゃん、泣いていたわよ、なんでもマチちゃんに嫌われたと、思っていたようよ」


「お京ちゃん、寵妃見習いよね、オルゴールは支給されているのよね、私かけてみようかしら……」

 町子さんが呟きました。


 クリームヒルトさんが、

「じゃあね、明日お京ちゃんにかけて来てね、まだオルゴールの使い方、知らないと思うから」

「それに蓬莱では何処でも出せると言うわけではないので、宇賀ビルに集まっておくから」


「それとね、もう一人のお友達、乙女ちゃんも紹介するわね、マチちゃんたちも呼んでおいてね」


 立体ホログラムが消え、通信は終了しました。


「よかった……お京ちゃん、無事だったのね」

 町子さん、ものすごく嬉しそうな顔です。


 翌日、学校でクリームヒルトさんが京子さんに、

「夏休み、予定がないって云っていたでしょう、宇賀さんがね、山陽シーサイドホテルの一室をどうかって云ってくれたの、勿論OKでしょう?」


「あそこはプライベートビーチがあるから、ホテルからそのまま水着ででられるのよ」


「私はOK、乙女ちゃんは?」と京子さん。

「昨日の内にOKよ」と乙女さん。

「私だけ仲間はずれ?ひどいわ!」と京子さん。


 クリームヒルトさんが、

「まぁまぁ、でもその部屋大部屋なの、でね、お友達を呼ぶことにしたの、お京ちゃんは知っているわよ」


 ?


「マチちゃん、シズちゃん、ミチちゃん」


「マチちゃん……」と京子さん。

「昨日話しておいたわ、今日連絡が有るはずよ」とクリームヒルトさん。

「連絡?」と京子さん。


 クリームヒルトさんが、

「二人とも良く聞いておいてね、オルゴールを頂いたでしょう、あれはお給料の受け取りができるのよ」

「私もだけど、二十歳までは使えないけどね、でも全ての女官に支給されていて、相手をイメージして隠しボタンを押し、箱の蓋を開けると相手につながるの」


「携帯電話みたいなものだけど立体映像でつながるのよ、でも分かるでしょう、この蓬莱ではどこでも出せる訳ではないという事は」


 三人が宇賀ビルで指定の時間に待っていると、京子さんのオルゴールが振動しました。

「お京ちゃん、かかってきたわよ、早く蓋を開いて」とクリームヒルトさん。


 ……懐かしいマチちゃん……


「お京ちゃん……ご免なさいね、私、助けてあげられなくて、お友達だったのに……ご免なさい……」

 町子さん、泣いているようです。

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