アルバイトは誰のため?


 しばらくペチャクチャと、しゃべっていた二人です。

「分かったわ、じゃあね、あっ、クリちゃんがまだ話があるって」と京子さん。


 クリームヒルトさんが、

「もう一人紹介しなくっちゃいけないの、乙女ちゃん、来てくれない」


 乙女さんが、ホログラムで浮き上がります。

「はじめまして、山野乙女といいます、仲良くして下さい♪」


「こちらこそ、佐田町子です、今度会えるのが楽しみね♪」

 町子さん、はじけていますね、余程嬉しかったのでしょう。


 結局、町子さんたちは、友達を連れてきませんでした。


 一応ヴィーンゴールヴはマルス文化圏、テラのパラレルワールドである蓬莱へは、連れてこないほうが良い、そのように判断したようです。


 七月の二十七日、夏休みの真っ最中に三人は宇賀ビルに転移してきました。

「お京ちゃん!」と、町子さんが抱きついています。


 宇賀さんも待っていました。

 町子さん、静子さん、美千子さんの親代わりの宇賀さん、三人にとって優しいお母さんなのです。


 宇賀さんが、

「皆大きくなったわね、嬉しいわ、取りあえずホテルのお迎えバスを待たせているのよ、ところでご飯たべた?」


「まだです!」と娘たち。


 宇賀さんが、

「じゃあ、すぐホテルへいきますか、ランチはバイキングでよいでしょう、もっとも三日間、モーニングとランチはバイキング、ディナーはお弁当、若い娘は贅沢はだめよ」


 ホテルへは昼前につきました。

 すぐに部屋に荷物をおき、バイキング会場へ、やはり若いですね……たべますよ。


 そのかしましい事、お色気など何処にもありません。

 その上に、モデルのような綺麗な美少女たち。

 中の一人は金髪碧眼ですからね、とても目立っています。


 宇賀さん、オーナーですから支配人が挨拶に来ました。

「紹介するわね、私の大事な姪とそのお友達、皆娘みたいな子たちなの、ほら支配人さんにご挨拶してね」


 皆さん、賢くご挨拶したので、かなり好感を持ったような支配人さんでした。


 宇賀さんが、

「そうですね、今日この子達でも出来るお仕事ないかしら、無給でいいわよ、社会見学になるわ」


 えぇぇぇぇ、宇賀様、ひどい!娘たちのブーイングの合唱が起こりました。


 支配人さんが、

「いますぐといわれますと、しかも誰でもできるといわれると……そうですね、幼児用プールの掃除をしていただけるなら助かります」


 なんでも今年から幼児用プールは閉鎖し、取り壊す予定だったのですが、お客様のご要望が多く、急遽存続することになったそうです。


 仕方ないのでアルバイトを募集して、準備出来次第開くことになったそうですが、掃除だけ当日のアルバイトの応募が無くて、従業員で何とかしなくてはと思案していたそうです。


「それはいいわ、体力がとりえの娘が四人もいるから」

 失礼な事を宇賀さんが云っています。


 この山陽シーサイドホテルは、夏場にぼろもうけする海辺のホテルとして有名です。

 玄関は二階にあり、これを一階と称しており、幼児プールは地下の温水プールの横にあります。


 地下にはそのほかシャワールームなどがあり、そのままプライベートビーチに出られるようになっています。

 かなり大きなロッカールーム、温泉施設、簡単な食事処もあります。


 支配人さんに案内されて、宇賀さんと六人の娘たちは幼児用プールへ、ここガラス張りで丸見えですよ。


「水着は持ってきているの?」と宇賀さん。

「はい」と六人の娘たち。


 宇賀さんが、

「では着替えてきてね、確か上に羽織るものがありましたね、それを貸してあげてください、一応見習い従業員の体裁をとらなければね」


「では夕食までがんばってね、支配人さん、宜しくね」

「娘さんたちをお預かりいたします」と支配人さん。

 

 六人は案内された更衣室で水着に着替えていますが、そこは女学生さん、笑い声がたえません。

「クリちゃん、相変わらず足が長いわ!」

「シズちゃん、胸が大きくなった?」

「乙女ちゃん、細い!」


「お京ちゃん、体形あまりかわらないわね」

「ほっといてよ!」

「マチちゃん、ビキニじゃないの?」

「それ、ちょっと刺激的すぎない?」


「さて、着替えたし、お掃除始めますか?」

 最後はクリームヒルトさんが皆を促したのです。

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