エピローグ:怜和二年の夏の終わり

エピローグ1.VTuberメイプル楓の人生相談(第11回)

 毎日暑いですね、皆さん夏バテは大丈夫ですか? がんばるあなたを応援したい、ふんわりお姉さん系女子高生VTuberのメイプル楓です~。というわけで始まりました『メイプル楓の人生相談』、第11回をやっていきたいと思います。

(コメント:「かえでさ~ん」「待ってた」「結婚して」)

 ふふふ、わたしは結婚なんかしませんよ。なぜなら楓さんは皆さんのものなので!

 ところで皆さんの中に、第7回の配信を聴いてくださってた方ってどれくらいいらっしゃいますか? というのはですね、あのとき『まくらなげ』でメッセージをくださっていた『やきそばパン』さんから、嬉しい続報が届いたんですよ!

(コメント:「あったねえそんなの」「なんやなんや」「やきそばパン食べたい」)

「楓さんこんにちは、以前人生相談メッセージを送らせていただいた『やきそばパン』です」

 覚えてますよ~。

「『毎日が退屈でなんだか空っぽな気がする』という僕の質問に楓さんが答えてくれた、『打ち込めることを見つけてみたら?』というアドバイスを聞いて、僕は中学生の頃のことを思い出していました。

 当時の僕は受験勉強に必死で、目標の高校に入るためにいろいろなことを我慢してきました。将来のため、今日よりも明日の自分の幸せのため、そんなことを考えて、大好きなゲームや漫画も封印して打ち込んできました。

 その結果、念願叶って志望校に合格。でも、何か違う……。そんな風に思いました。改めて考えると、燃え尽き症候群、というやつだったのかもしれません。

 好きなものや好きなことを、素直に好きだと言えること。周りの人はみんな、生き生きとしている。僕だけが違う、誰もいなくなったスタートラインに一人だけ取り残されているみたいな感覚。

 『やるべきこと』に必死で、『やりたいこと』を忘れていた。

 そんなふうに思います。

 

 『やりたいこと』が見つかりました。

 中学校のときにやっていた部活で、レギュラーになること。

 うちの高校はとても強豪とは呼べない、地区予選で一回勝てればいいような弱小チーム。それでも、レギュラーの椅子を巡っては熾烈な争いがあります。

 必ず努力は報われるとか、夢は絶対叶うとか、そんな保証もない。

 でも、やってみたい。

 厳しい戦いの中で、自分がどれだけやれるのか、試してみたい。

 それが、今の僕の『やりたいこと』です。


 それに、部活で友達ができました。

 初めて話したはずなのに、やけに気が合う相手。ずっと前から知り合いだったみたいな、物事の考え方が心地良くて。

 「一緒にレギュラー目指そうぜ!」なんて、放課後のファミレスで語り合ったりして、そういうこっ恥ずかしい、絵に描いた『青春』みたいなことを照れずに言える相手が出来たことが、本当に嬉しくて。

 数か月前の自分が嘘だったみたいに、今、僕は充実した日々を送っています。

 あのとき背中を押してくれた楓さんに、お礼を言わせてください。

 ありがとうございました。……」

(コメント:)

 ……。

 …。

 あ、ごめんなさい。ちょっと涙が……。

(コメント:「ホントに泣いてたw」「わかるわー」「おれも聞き入ってた」)

 そうだね……。よかったね。これからも、友達と一緒に、頑張ってね。

 『やきそばパン』さんがレギュラーになれたら、また教えてくださいね!

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