会社員と海の子守唄(6)
「海神様の使い様、どうぞこちらへ。」
あ〜……なんでこうなってんだろう……
俺とアスカは只今、領主様の館に向かっています。迎えにきた豪華な馬車に乗って運ばれている所です。
「あ〜。なんでこうなったんだろ……」
「ねぇ。ご飯食べてただけなのにねぇ〜。」
あの後、お客さんや店員さんに囲まれて、人魚や巨大な魚との関係を聞かれまくった。
この街にはたまたま冒険で来ることになっただけで人魚とも何の関係も無いと伝えたが、
ウルドの領主様からクルーンの冒険者ギルドに連絡が入っていたようで、ギルドの職員が俺とアスカの名前を知っていて、
ウルドでの出来事を食堂で話したもんだから……あれやこれやと話しが盛り上がってしまい……宿屋に帰ると豪華な馬車が待っていましたとさ。
「はぁ。」
「そんなにため息ついてると楽しいことも逃げていくよ?」
「もうすでに裸足で逃げ出していると思うけど?」
「そうだ。海に逃げていったね。串焼き持って。」
アスカのツッコミに俺はたしかにと思った。
「俺の幸せは海の藻屑と消えてしまったのか……」
くだらないことをアスカと言い合っていると馬車は街の中を走っていき、領主の屋敷へとたどり着いた。
二階建ての領主の屋敷は木造で作られていた。一階は住民が多く出入りしている。どうやら役場も兼ねているようだ。
「あ、あの時の人たちだ。」
アスカが声を出す。
「ん?」
俺がアスカの顔を見て視線の先を見る。腕に入れ墨を入れている男たちがいる。彼らはここで働いているようだ。
「……大丈夫かこの街?」
少し心配になってしまう。あの行動を取るのが役場で働いているってことはあいつらがこの街で権力を持っているってことだろ? いいのか?
俺たちはついに領主と対面することになった。
……。
俺とアスカは言葉をなくした。
領主の腕にもばっちりと入れ墨が入っていたのだ。
今後がとても不安になった俺であった。
会社員は辞令が出たので働きます…異世界で くじら時計 @k2kujiratokei
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