エルフの願い

「ケニー! 大丈夫!? どうしてそんな無茶をしたの!?」


姉のエルフが木に押しつぶされそうになっているケニーを介抱する。


「……姉さん、あいつらが……」


「あいつらなんてどうでもいいの! あぁ、ケニーが血だらけ……何てこと……こんなはずじゃなかったのに……」


「姉さん……」


姉のエルフはそう言いながら、ケニーを抱きしめて涙を流す。


『はっはっはぁ。邪魔者はいなくなった、いなくなった。人間を栄養にして、私はさらに成長する。よくやったぞエルフの民よ。約束通りだ。はっはっはぁ。』


「……姉さん?」


「……古木と契約したの。人間を薬と一緒に取り込まれるように仕向けたの。これも私たちの楽園を作るため。ケニーと私のため。いえ、エルフのためよ。」


姉のエルフにはケニーしかいなかった。


『はっはっはぁ。人間は愚かにもエルフの策略に嵌ったのだ。エルフの民よ。約束は守ろう。さらに褒美もとらせよう。同胞を治すチカラを授けよう。』


「……良かったねケニー。これで私たち一緒に暮らしていけるよ。」


「姉……さん?」


『はっはっはぁ。私は生命をつかさどる森の主。エルフの民よ、再生のチカラを受け入れよ。』


古木の声とともに、姉のエルフとケニーが光に包まれる。徐々にではあるが、ケニーの傷はふさがり、姉のエルフの表情もどこかしら穏やかな表情に見えた。


「……傷が治っていくよ……! 姉さん!?」


自分の身体の変化に驚いていて、姉のエルフの変化に気づくのが遅くなってしまった。徐々に姉さんの皮膚が木になっていく。何故!?


『お前を救うために魔力を注ぎ過ぎたのだろう。無茶をしすぎだ。お前の魔力を姉さんに返してやれ。そうすれば助かるだろう。』


「姉さん、ダメだ。俺だけ助かっても。一緒じゃないと……」


ケニーは慌てて魔力を返そうと姉のエルフに魔力を流す。しかし、姉のエルフは魔力を受け取ろうとしなかった。いや、出来なかった。姉に魔力を流すことが出来なかったのだ。


(何故? 姉さん……受け取ってくれないの?)


ケニーは姉の顔を見た。そして悟ってしまった。


姉の目は緑色になっていた。


(姉さん……ごめん……)


『はっはっはぁ。エルフの民よ。おまえたちのおかげだ。そのまま森の一部としてこれからも生き続けのだ。約束通り、二人で。永遠に。』


姉が慈愛のある表情で弟を抱きしめ、弟は静かに涙を流し姉の顔を見つめたまま、二人は森の中で木々となり、人間が気づくその時まで、静かな時を過ごすこととなった。

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