会社員と緑の守護者(17)
「おい! ケニー! 剣を返せ!」
「ちょっとエルフ! 剣返せ!」
俺とアスカが剣を取り返そうとケニーに近づこうとするが、俺たちとケニーの間に、木々が地面を突き破り壁のようにそびえ立った。
『はっはっは! いいぞぉ。いいぞぉ! エルフの子よ。その剣をこちらに渡せ。』
大木が俺たちの邪魔をしてきた。壁となった木々だけではなく、大木から大量に緑色の液体が飛んでくる。俺とアスカは液体に触れることなく避けるが、緑色の液体は地面に落ちると、狼の形へと変化して俺たちを襲ってきた。
「ディー! 気を付けて。数が多いよ!」
くそっ! 狼の対応に追われてケニーに近づけない。その間にもケニーと大木は会話を続けているようだった。
「古木よ! 剣が欲しければ、わが願いを果たせ!」
『叶えてやろう。さぁ、早く剣を渡せぇ。』
「先にエルフの宝を返せ! 剣はそれからだ!」
『エルフの宝かぁ。そこまでして返して欲しいのかぁ。』
「ケニー! 止めろ! その剣があれば大木を倒せるんだ。エルフの宝は大木を倒してからでもいいだろ!?」
緑の狼を倒しながら俺はケニーに話しかける。ケニーはこちらにチラッと視線を向けたが、すぐに大木に向き直る。
「人間は黙っていろ。宝は古木が生きている時に返してもらわないと意味がない。古木が死んでからでは遅いのだ。さぁ、どうする古木よ。このままでは人間が緑色の狼を倒し終わるぞ。」
ケニーの説得に応じたのか、大木は一つの提案をしてきた。
『……仕方ない。エルフの子よ。剣を地面に置けぇ。置けば宝を返してやろうぅ。』
グサッ
エルフのケニーは剣を地面へと突き刺し、両手を剣から離した。地面に置いてあるが、何かあればすぐに剣を持てる状態にしている。ケニーは意外と冷静だ。
「古木よ。剣を地面に置いたぞ。さぁ、早く宝を返せ。」
『……おぉ。流石エルフの子よ。賢しい、賢しい。ではな、宝を返そう。さぁ、受け取れぇ。』
そう言って大木は震え、大木から一つの塊が落とされた。塊は風に流されているようだ。俺たちと大木から離れていくように移動している。
エルフのケニーはそれを見て、地面に刺した剣を抜こうと剣に手をかけた。しかし、剣はビクともせず、抜けなかった。ケニーは数度、挑戦したものの、剣を諦め、落ちてくる塊に向かって走っていく。
俺たちは緑色の狼を倒し終えた。壁となっていた木々をなぎ倒し、エルフのケニーが置き忘れていった剣を取り戻そうと剣に手を伸ばすが、あと少しといったところで剣は赤黒い葉っぱに包まれ、地面へと潜り込んでしまった。
「くそっ! 剣がなくなってしまったぞ。」
『はっはっはぁ。これで、これで怖いものはない。世界は森に包まれるのだぁ』
大木が高笑いをしている頃、ケニーは塊に向けて走っていた。
「……今度こそ。今度こそは私が……守ってみせる。」
ケニーは走り切った。塊の落ちてくる地点へと先回りして、落ちてくるのを受け止める用意をしている。
黒い塊は人型の形をしているようだ。両手で黒い塊を丁寧に受け止め、すぐに塊のように見えた人の顔を確認する。
「あぁぁぁぁぁ!!!」
嬉しかった。大きな声で喜びを表現してしまった。久しぶりに見る顔はとても穏やかそうだ。すぐに目の前がかすんでしまう。拭いても拭いてもかすんでしまう。目元を何度もこすりながら、
「やっと会えたね……姉さん。」
ケニーは長年の夢を、目標を叶えたのだった。
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