会社員と緑の守護者(16)

「ディー! 大丈夫!?」


アスカの声に俺は意識を取り戻した。


「あぁ、アスカ。あれ、芋虫の精霊は?」


(僕ならここだよ~。)


俺の手元から声が聞こえてきたと思ったら、剣が光っている。


「ディーが触ったと思ったら、芋虫が光の玉になって剣に入っていったんだよ。しばらく待つように芋虫の精霊さんに言われたけど、ディーに声をかけても返事がなかったから焦ったよ。」


アスカがその時の様子を伝えてくれる。


(さぁ、これであの木を倒せるから、さくっとやっちゃおう!)


(この光りには、森の木々を退治するチカラが宿っているから、あの大木に突き刺すだけで今回の一件は終了だよ。)


「……この剣を刺すだけなのか……案外簡単なんだな。あの木をなぎ倒すのかと思っていたぞ。」


(普通はなぎ倒すんだけど、これはサクラが使っていた剣だからだね。この剣は僕のチカラが何倍にも強くなることが出来るから。突き刺すだけでも効果的なんだよ。)


「ふぅぅん。」


「あ! ディー、木がすごく揺れてるよ!」


アスカの指摘に、俺は森の大木に目を移す。巨大な大木は強風が吹いているかのように大きく揺れ動き、大量の緑色をまき散らしていた。


『おぉぉぉぉぉ……精霊よぉ、なぜ邪魔をするぅ。』


「えっと……なんか声が聞こえるんですけど……」


(あぁ、あの木が話しかけてきているんだね。)


何気ないように芋虫の精霊さんが言ってるけど、木が話すって……


(芋虫の僕も話すんだから、木がしゃべってもおかしくないと思わない?)


……たしかに。


『……精霊よぉ。このままでは人間が全てを支配するぅ……それからでは遅いぃ。遅すぎるのだぁ。今こそ我ら森の楽園を築く時ぞぉ。』


(う~ん、君の言いたいことも分かるけどさぁ、やり方ってもんがあると思うんだよねぇ。)


急に精霊と大木が話し出した。退治しようと思っていたが、とりあえず話しを聞いてみるか。もしかしたら何か解決策が見つかるかもしれない。


『我が造った森は全てが森のために生きるぅ。森が森を生むんだぁ。』


(うんうん。それはいいことだね。だけど、単一の生き物で成長はできないと、僕は考えているんだよねぇ。)


『滅びゆくのをぉ、指をくわえてぇ、眺めろとぉ?』


大木がさきほどよりも大きく揺れた。左右にだけじゃなく上下にも。聞こえてきた声も大人しい口調から、語彙が強い口調になってきている。これは交渉決裂か?


(環境によって変化はするもんだよ。それが生きているってことじゃないの? その時代に合わせた生き方を模索するのが進化だと思うんだよね。)


『進化の流れをぉ、我が造って見せるぅ!!』


(……君の場合は、環境に合わせるんじゃなくて、環境を君に合わせているよね? それって……あぁ!)



迂闊だった。


俺もアスカも芋虫の精霊すらも想像していなかった。


一瞬の出来事だった。



「ハァ、ハァ……ハァ。」



あいつがこの件に絡んでくるなんて。


「ハァ、ハァ……。ウルドの古木よ聞け! この剣欲しくば、私の願いを聞き遂げよ! さもなくば、この剣を私が貴様に刺してやる!」



捕まっていたエルフのケニーが……俺から剣を奪うだなんて……

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