会社員と緑の守護者(12)

俺とアスカはギルドの緊急依頼で森の調査に入ることにした。


他の冒険者たちも森へと繰り出しているようだ。


街のすぐそばまで森におおわれている街だから、周囲の森や街道が安全なのか確認が必要なのだろう。


俺とアスカも武器を構えながら慎重に歩いているが……


「……普段と変わりないか? 魔物が溢れている感じではなさそうだ。」


街道の周囲を見回しながらアスカも頷いている。魔物は今のところ見つからない。


「……もう少し奥に進むか。」


警戒しながら歩いていると


「群れだ~!! 助けてくれ~!」


冒険者の悲鳴が聞こえた。


声の方角に向かうと魔物のウルフが5頭、冒険者を襲っていた。


武器を構えてウルフを攻撃している冒険者は3名いる。攻撃にひるまずに5頭のウルフは何かに噛みついている。


走って近づいていくと、どうやら冒険者が一人倒れている。それに狼が群がっているようだ。


「とっととドゥラーから離れやがれ! このウルフ~!」


3人の冒険者が狼を離そうとして攻撃しているが、なかなか離れない。


「助太刀するぞ!」


俺とアスカも協力して狼の魔物を叩く。


「あぁ、頼む! こいつら変なんだ!」


何が変なのか分からないが、俺たちはウルフを攻撃していく。しばらくすると冒険者を襲っていたウルフが動かなくなるのを見て、倒せたのだとホッとした。


一緒に戦った冒険者が変だと言ったのが分かった。ウルフは賢く、危険を感じるとすぐに逃げる魔物だ。しかし、恐ろしいことにこのウルフ達は、死ぬまで冒険者に噛みついたままだった。


恐ろしいウルフ達の牙はやはり、緑色の牙だった。異常な個体なのか、森の影響なのか……


噛まれていた冒険者は一命をとりとめたが、全身に緑色の斑点が浮かび上がっていた。治療を受けさせるため、傷ついた冒険者を担ぐ人、周囲を警戒する人に分けて、街へと戻った。


ギルドに傷ついた冒険者を運び終え、ギルド職員に状況を報告していると、別のギルド職員からお呼びがかかる。


報告を終えて向かうと、そこにはメイドさんが佇んでいた。


「領主様がお呼びです。館までご足労願います。」


俺とアスカは馬車に乗り、領主の館に向かった。メイドの案内で部屋に通されると


そこには領主様と婆やと呼ばれていた女性が待っていた。


挨拶もなく、領主様が切り出す。


「要件は分かっているだろう。緑牙の魔物についてだ。」


俺とアスカは頷く。


「こないだお前たちが持ってきた牙と同じやつだと推測される。あいつらが森のどこかからか大量に出てきたようだ。ウルフが変異したにしては数が多すぎる。」


「……それってどういうことですか?」


「つまり、森のどこかにウルフが緑色の牙を生やす原因があると睨んでいる。」


「人数をかけて探さないと……俺たちだけだと時間がかかり過ぎます。」


「あの……質問ですけど、精霊とかって助けてくれないの?」


アスカが手をあげて領主達に尋ねるが、二人の顔は渋い表情となり、困惑しているように見える。婆やが話しかけてきた。


「……いつもなら精霊様に聞けばすぐに応えてくれてるはずなのに、どうしてか応えてくれないんだよ。ここに精霊様がいるのにねぇ。何かしらの影響は受けているようで、これも理由が分からないんだよ。」


部屋の後ろでぼんやりと光りを放っている巨木を見つめるが、脈動しているように淡い光で点滅を繰り返しているだけだった。


「精霊様も影響を受けているのですか……打つ手なしですか。」


「冒険者たちには周囲の安全確認と不審な物を見つけたら連絡するようにギルドにお願いをしている。また、回復する方法も探るようにしている。ケニーがいつ戻ってこれるか未知数だからな。そして、君たちにしか出来ないことをお願いしたい。」


領主からのお願いを俺とアスカは了承してすぐに向かうことにした。

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