会社員と緑の守護者(11)

「ディー、こんなところでボーッとしてると危ないよ。とりあえず街に戻ろう。」


アスカの声にハッと気づき頷いた俺は、アスカと一緒に、森からウルドの街へと戻ることにした。今回のクエストは不達成になってしまうが……仕方ない。


せっかく女神が教えてくれたんだ。対策を考えないと……


ウルドの街に戻った俺とアスカは、冒険者ギルドでクエストの失敗と森の奥に入る方法を聞いた。


「耐性をつける道具があるとか、森の奥に入る方法ないですか?」


「残念ながら聞かないですね。ましてや、そんな道具があるのでしたら、ギルドで取り扱っていると思います。」


「そうですよね……」


俺とアスカは途方に暮れた。何か手段はないのだろうか……


「でも……」


「でも?」


ギルドの受付嬢はあごに手をやり天井を見つめながら何かを思い出すように答えた。


「エルフのケニーさんが入れているので、何か方法はあるんじゃないでしょうか。」


……あぁ、確かに。あのエルフのケニーが入れているのは何か理由があるんだろう。


「……聞きに行くか?」


「あいつのところに? ……すっごいイヤ。」


俺も今日は疲れた。今からケニーと話す体力がない。


「……今日は休むか。」


俺とアスカはギルドから宿へと向かった。食事をして風呂に入って、何もしない時間を過ごし、心身を休める時間にした。


……エルフのケニーと対面するのは体力と気力を使うからな。


翌朝、気乗りしないが朝食後に領主の館へと向かった。エルフのケニーは門番をしていると思って来てみたが、門番にケニーはいない。門番をしていた人に聞いてみたところ、ギルドに呼ばれてギルドへと向かったとのことだ。


「アスカ、俺たちもギルドに行くか?」


「そうだね。」


俺とアスカは門番にお礼を言って、ギルドへと向かう。もう少しでギルドに着くかというタイミングで、ギルドから多くの人が出入りしている姿を見かける。


「何か、いつもよりあわただしいな。何かあったのか?」


「とりあえず行ってみよう。」


俺とアスカがギルドに入ると、そこは野戦病院のように多くの冒険者が床に寝転がっている状態だった。


「な、なんだこれ!?」


「なにこれ!? みんな寝転んじゃって……血とか出ていないけど、ケガしてるの?」


寝転んでいる冒険者は呻き声をあげながらのたうち回っている。


よく見ると、10円玉くらいの大きさの緑色の斑点が手や首、足にできている。


「何があったんですか?」


たまたま近くにいた冒険者に話を聞いたところ、日の出とともに狩りに出た冒険者達が、狩りの最中に魔物に襲われたとのこと。その影響でこのような症状が出ているようだ。しかし、今までこんな症状が出る魔物はいなかったそうで、何か起きているのか分からないそうだ。


そしてエルフのケニーは、万能薬として人気のある草を採りに、森の奥に行ったそうだ。


これだとケニーにも会えないな。床に寝転んでいる冒険者の手当はギルドの職員が行っている。俺たちにできることはなさそうだ。


「助けてくれ……緑色の牙が襲ってくる。」


「……緑色の牙?」

 

森は少しずつ変わりつつあるのだった。

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