会社員と緑の守護者(9)
期限がきていない依頼は、人の手のような形をした葉っぱを森の奥から取ってくる依頼だった。受付から話しを聞いた俺とアスカは翌朝、森の奥へと向かって歩いていた。
森の街道を通り、途中から獣道を通り奥へと進んでいく。
森は相変わらず鬱蒼としている。それでも精霊が戻ってきたせいか、森の雰囲気? が落ち着いているように感じた。
「う~ん。なんか空気がおいしい感じがする。精霊のチカラかなぁ。」
「そうだな。森もいつもより活発な感じだな。」
いたるところで生物が活発に営んでいる。それを横目に、今回目指すのは森の奥だ。
しばらく獣道を進んでいくと、ある所から獣道が途切れていた。獣道が途切れたところからはさらに鬱蒼とした森が一段と暗く、先が見えないほどの暗闇が拡がっている。
受付で聞いたが、ここから先が森の奥に通じているそうだ。
これからが本番だな。俺とアスカは、気合を入れなおした。森の奥に少し入り暗闇に目を慣らしているとだんだんと辺りの景色が見えてきた。
うんうん、これで多少は動けるかな。薄暗い森を見まわしていたら、人の手に似た形をした葉っぱが見えた。目当ての木はすぐに見つかったのだ。
木に近づいていく俺にアスカが声をかける。
「ディー、どうしたの?」
「うん、アスカ。見つけたよ。」
俺は目的の葉っぱを掴み、アスカに見せた。
「……そんな葉っぱだった?」
「何言ってんの、この葉っぱで間違いないって。」
こんな特徴的な形をした葉っぱがたくさんあるわけないだろ。それにしてもあっけない。こんなことなら俺たちじゃなくても行けそうなのに。
俺は念のために2,3枚葉っぱをちぎり、袋に入れて持って帰る。さて、依頼が終わってしまった。今回はラッキーだった。こんな簡単な依頼なのに森の奥ってだけで難易度が高くなっているんだな。
帰ろうとしてふと、おかしな木を見つける。松のようにクネクネと曲がった木だが、幹の根元が以上に膨れている。タルでも取り込んでいるかのような膨らみだ。周りの木々を見まわしたが、同じような木は見当たらない。
変わった木だな。森の奥には独特の木々が生息しているのかもな。
「ディー、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。あっけないけど、とりあえず帰ろうか。」
俺とアスカは森の奥に進むことなく帰路につくことにした。さらに奥に入っていってもよかったが……まぁ、いいか。とりあえず、帰ろう。俺は歩きだした。
「……ディー、どこ行くの? ウルドはこっちだよ。」
アスカに声をかけられて俺は道を間違えていたことに気づいた。
「え? あ、あぁ本当だ。今は精霊のおかげで光ってるから帰り道分かり易くて楽だな。」
明るい方向に帰ればいいのに、足は違う方向を向いていた。何でこっちに向かって歩いていたんだか。危ない危ない。こんなところでぼっとしていると危険だな。
俺たちはその日のうちに街へと戻ることができた。翌日、受付に行って、依頼の品である葉っぱを受付嬢に提出した。
「……似ているようですが、この葉っぱじゃありませんよ。」
あれ? おかしいな。たしかにこの葉っぱだと思ったんだけどな?
どうやら別の葉っぱを取ってきてしまったようで、無駄足になってしまった。
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