会社員と緑の守護者(10)

前日は失敗した。まだクエストの期限は来ていない。


もう一度森の奥へと向かう。今度こそ間違えないようにもう一度葉っぱの特徴を確認する。


……やっぱり手の形だな。よし、行くぞ。


昨日と同じように森へと入っていく。


……はぁ、はぁ。


昨日より魔物に出会う。昨日は全く会わなかったのになんで今日はこんなに出会うんだ?


「……とりあえず、目につく魔物は倒せたか。アスカ、大丈夫か?」


「……疲れたぁ。」


「そうだな……まだ森の奥に到着していないのに、こんなに魔物に会うなんて思わなかったな……」


「なんかおかしくない?」


「おかしいか?」


「うん。昨日はあんなに静かだったのに、今日は魔物が多すぎるよ。何かあったんじゃないかな。」


「何かって?」


「分かんないけど。きっと何かあったんだよ。」


そんな……いや、アスカはたしかスキルで『直感』があったな……そしたらやっぱり森で何か起きてるのか?


「……アスカ、嫌な感じはするか?」


「どうだろ……わかんない。」


アスカは首を振って返事する。


「……森の奥が見えるところまで進もう。でも、森の奥を覗いたら、すぐに引き返す。、そして、それまでに魔物の群れがいたらすぐに引き返す。アスカ……どう?」


「うん……でも、危険だったらすぐに引き返そうね?」


「分かった。」


俺とアスカは慎重に森の奥に向かって歩いていく。今日の森は何かの生き物の叫び声

が至るところから聞こえており、その度に俺たちは身構えながら、ウルドの森を奥へと目指した。


「なんとか、昨日と同じところまではこれたな……」


俺とアスカの前には鬱蒼とした森が一段と暗く、先が見えないほどの暗闇が拡がっている。昨日と同じような風景だ。


警戒して歩いたおかげで俺たちは魔物に会うことなくここまで来れた。しかし、緊張していたせいで疲労している。


「奥は暗くて見えないが、変わりないようだな……」


森の奥を見つめるが、何も見えない。見えるのは前回と同じように依頼の木が近くに植わっていることぐらいだ。


「……この木の葉っぱだよなぁ。」


俺は葉っぱをちぎる。まじまじと見つめる。うん、やはりこの葉っぱだ。


「なぁ、アスカ。この葉っぱだろ?」


「……え? その葉っぱは違うでしょ?」

 

アスカは俺の顔と葉っぱを交互に見て違うと言ってくる。


「いや、どう見てもクエストにあった葉っぱだろ。」


「……本当に言ってる?」


アスカが信じられないといった顔で俺を見てくる。


「何でだよ。どう見ても手のひらの形をしているだろ?」


アスカに見えやすいように見せる。


「いや、見えてるけど、明らかに違うよ? 手のひらの形もしてないし。」


アスカはそう言って俺の顔を覗いてきた。そして何かに気づいた顔をした。


パカン!


「痛てぇ!」


アスカは俺の頭を杖で叩いてきた。木で出来た杖でも叩かれるとめちゃくちゃ痛い。


「何すんだよ!」


「ディー、もう一回その手に持ってるのを見てみて。」


そう言われて俺は手に持っている葉っぱを見た。


「えっ? なんで?」


俺が掴んでいたのは、三方向に分かれた葉っぱで、赤と黒のまだら模様の葉っぱだった。……うん、クエストの葉っぱではないぞ。


「なんで……全然違うじゃないか……」


「さっきまでこの葉っぱをクエストの葉っぱだって言ってたよね。今は明らかにおかしいと分かるよね?」


アスカに言われ、俺は素直にうなずく。


「……魔物の攻撃ではないと思うけど、何かしら幻覚を見せられていたのかもしれないわ。他におかしなことない?」


「攻撃……幻覚……いや、他には何も感じないぞ。」


「そうね……見た感じは何も感じないけど……ステータスで確認してみて。」


「あぁ、そうだな。ステータス。」


そう言って俺はステータスを確認した。


俺の目の前に半透明の板が出てくる。


名前   ディー (デコト・ボーコ)

レベル  **** 

HP   **** 

MP   **** 

からだ  **** 

ちから  **** 

まほう  **** 

めんえき **** 

うん   **** 

エクストラスキル ****

ノーマルスキル  ****

※やっと見てくれましたね。お久しぶりです、ニーケインです。ステータスですが、消失しました。ごめんなさい。その代わり、今回についてはお教えします。森の奥の木々は自己防衛として幻覚を見せてきます。幻覚の対応が出来るようになってから入らないと命を失いますよ? 

原因は奥にあるので、頑張ってくださいね。



俺が呆然としていると、半透明の板は音もなくヒビが入り。粉々に割れていき、空気に溶けるかのように消えていった。


……それから俺が「ステータス。」と声を出しても、半透明の板が現れることはなくなった。


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