会社員はⅩⅧ日目に謎解きをする(5)
眩しくて閉じていた目を開くと、そこには女神様はいなかった。その代わりではないが、俺の手のひらから箱は消え、カギが一つあった。
「このカギは何だろう。セバスさん知っていますか?」
「いえ、存じ上げておりません。」
セバスさんが額から流れる汗を拭きながら答えてくれる。
「不思議な形のカギだねぇ。」
アスカも近くにきてカギを見つめている。カギはスプーンのような形で持ちての部分に歪なギザギザがついていて、切れ味の悪いノコギリのようになっている。
「ディ、ディー様。箱の謎は解かれたのですね。ちなみに、最後の質問はどういった質問だったのですか?」
「箱は季節を表す模様でした。春夏秋冬という順番で側面のパズルを完成させましたよ。最後の質問は……俺の生まれ故郷では、有名なお話だったので分かりました。」
「そうですか……。ディー様、ありがとうございました。長年の夢が叶いました。」
「後はこのカギの謎を解くだけですね。」
「そうでございましたな。しかし、そんなカギが使えるところは領主の館では見たことがございません。」
「う~ん……とりあえず、このカギは領主のクラトスさんに預けるとして……脱線したけど俺の武器を選ぶか。」
「いい武器探さないとね。」
「そうだな。」
俺とアスカはカギをセバスさんに預け、再び武器を探して倉庫の中を歩きだした。
(……あ、あの……あのぅ)
「……うん? アスカ何か言ったか?」
「え? 何も言ってないよ?」
「おかしいな。何だろう。」
(もしもし……もしもし……)
「……聞こえてるような気もするけど、気のせいか。」
(あ! あの! 私の声、聞こえていますか?)
「はっきりと声が聞こえた! どちら様ですか?」
「え? ……私には何も聞こえないけど?」
「……私も聞こえておりません。」
(声届いたんですね。良かったぁ。あ、私はヨシノと言います。)
「ヨシノさんですか。姿は見えないのですが、どこにいるんですか?」
俺が辺りをキョロキョロと見渡す。そんな俺をアスカとセバスさんは心配そうな表情で見ている。
「ディー、どこかで頭でも打った? 変なものでも食べちゃった? 急にひとり言を言い出しちゃってどうしたの?」
(あ、ディー様っておっしゃるのね。私は先ほど箱の中に入っていたカギで開く世界におります。ディー様、さっそくそのカギを使ってみてください。)
「カギを使う? どうやって?」
俺はセバスさんのそばに行き、先ほどのカギを手に持つ。
(カギを持ったらそのカギに魔力を込めて下さい。)
「魔力か……ん!? これは!?」
「急にディーの前に扉が出てきたよ! ディー、何をやったの?」
扉はアスカもセバスさんも見えるらしい。魔力を込めると、カギが光りだし、目の前に木製の扉が現れた。カギをカギ穴に入れる。
カチャ。
カギが開く音がした。俺はカギを取り、扉の取ってを持ち、扉を押し開けた。
「いらっしゃい。待ってましたよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます