会社員はⅩⅧ日目に謎解きをする(4)
「……セバスさん。この箱ってどうやって手に入れたか分かりますか?」
俺は動揺を隠せず、箱を見つめながら執事のセバスさんに尋ねた。
「どうやって……ですか……代々珍しい物を集めたがる家系と言われていますから、おそらく行商人が持ってきたものを購入されたのではないでしょうか。」
「そう……ですか……じゃぁ、この箱に描かれている風景って、どこかで見れますか?」
先ほど完成した箱の景色をセバスさんに見せる。
「あいにく、この絵のような風景を私は見たことがありませんし、聞いた事もございません。」
セバスさんは申し訳なさそうに話す。
「そうですか……」
俺は気落ちした気分で箱を眺めていた。
ピ……ピピ……ピピピ……
箱から音が鳴ったと思うと、箱が光りだした。
「うぉぇあ!?」
俺はびっくりして箱を放り投げた。箱は光りながら地面に落ち、しばらくして光りが止まった。俺はセバスさんに視線を送る。セバスさんは笑顔で箱を手に取って俺に渡してきた。その箱を見ると、先ほどの風景は消えていて、モザイク模様へと戻っていた。
「先ほどの風景から時間が経つと、音が鳴って光りだし、元へと戻るのです。色々な手段を取って解明しようとしていますが、いやはやなかなか……私の代では難しいでしょうかな。」
セバスさんが話しをしている間、俺は手に持った箱が気になって仕方なかった。あの風景は俺が暮らしていた世界を知らないと描けない風景のはずだ。誰か分からないけど俺と同じで、この世界に飛ばされた異世界人がいるのか!?
「……ディー様、どうされましたかな?」
セバスさんが俺の様子を見て、声をかけてきてくれた。
「あ、いや、大丈夫です。何かこの箱の景色を見たことがあるような気がして……」
「そうなのですか!? では、この箱の謎が解けるのですかな!?」
セバスさんが顔を近づけて話しかけてきた。
「や、やってみないと、分かりませんが……」
セバスさんの勢いに押されて言葉に詰まる。けど、もしかしたら何か現実の世界に帰るヒントがもらえるかも知れないからな。やってみたい気持ちはある。
「では、ディー様。私が先ほどと同じように絵を動かします。その後、ディー様にお返しいたしますので、制限時間内に、側面4か所にございますモザイク模様を動かして形を作って下さい。そうすれば箱が開くはずです。」
「分かりました。」
「ねぇ、セバスさん。そこまで分かっているのなら、もう開けられるんじゃない? 何で今まで誰も開けられなかったの?」
アスカがセバスさんに尋ねた。そう言われればたしかに……
「何度もチャレンジしたのですが……失敗をするたびに側面の絵が変化するのです。また、側面を完成させたとしても最後の問題が解けないのです。」
「最後の問題って何?」
「側面を完成した後に、箱から問題が出されるのですが……良くわからない問題なので、答えられないのです。」
ふむふむ。まぁ、ダメでもともと。何度もチャレンジ出来るのなら、クリア出来るまでやってもいいかも知れないな。
「じゃぁ、せっかくなのでやってみます。セバスさんお願いします。」
そう言って、セバスさんに箱を渡す。
「拝借いたします……カチカチ……良し。ではディー様宜しくお願いいたします。」
セバスさんが桜並木を完成させ、俺に渡してくる。
側面を見ると、不思議な形のモザイク模様だ。桜並木の模様と同じで、これも動かすことで別の絵になるパターンだな。
……カチカチ……カチカチ……
う~ん、絵になるのかこれ? 絵にしては不思議な形だしなぁ。
使っている色も少ないし……桜並木とは雰囲気が違うな……
「ディー、頑張って~。」
……アスカ、応援ってのは相手を見て言うもんだぞ。見てるのが飽きたのか、遠くからの応援ではチカラが抜けるなぁ。
……ん? あれ、これって……
……カチカチカチ……カチカチカチ……
やっぱりそうだ。となると、他の面からやらないとダメだろうな。
……カチカチカチ……カチカチカチ……
「デ、ディー様。まさかお分かりになられたのですか?」
「はい。これは俺が住んでいた所では皆が習うことですので、おそらくこれで間違いないはずです。」
……カチカチカチ……カチカチカチ……
よしよし。残りあと一つ。
カチカチ……カチ。
「ふう~。」
よし。時間内に側面をすべて変えて見せたぞ。さぁ、どうなる?
『お見事です!』
箱から女性の声が聞こえてきた。どうやら正解だったようだ。
『では、最後の問題です。』
ゴクッ。
『童話浦島太郎で、浦島太郎が助けたのは何?』
「……亀。」
『お見事です! 貴方がこの世界で生き残れるように祈っております。』
小さな箱は俺の手元で眩しい光りを放ちだした。
この感じ、二回目ですけど~!!?
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