会社員はⅩⅧ日目に謎解きをする(回想4)
眩しい光りが世界を白く染めていたが、明るさを調整するように光りが日常の明るさへと戻っていく。
「……そんな……」
「……ま、まさか……」
クラトスさんとライラックさんは口を開き、目を大きくさせた表情のまま、俺を見ている。いや、俺と目が合っていないぞ。どうやら俺の隣を見て驚いているようだ。俺もつられて隣を見る。
「なっ!?」
さっきまで俺の隣には誰もいなかったのに、白いワンピースのような服を着ている女性が俺と目を合わせながら慈愛を感じる笑顔を見せていた。腰までありそうなキューティクル抜群の金髪と、ワンピースから飛び出てきそうなふくらみ。
……女神様っているんだな……
そう感じさせるオーラを身にまとった女性だった。
「初めましてデコト・ボーコ。」
ワンピースの女性は俺に挨拶をしてきた。えっ? 俺の名前を知ってるの?
「あ、どうも初めまして。えっと……どちら様ですか?」
「ディー様!? 知らないのですか!?」
「ディーさん!? この方はニーケイン様ですぞ!」
俺が知らないことにクラトスさんとライラックさんが驚愕している。それよりさっきから二人とも片膝を立ててしゃがみ込んでいて、この女性を尊敬というか奉っている感じを受ける。
でも、俺この世界の精霊がどれくらいすごいのとか知らないしなぁ……
クラトスさんとライラックさんがすごく驚いているってことは、とても有名な精霊なのだろう。カグヤも大きな口を隠すように両手を口に当てて、目を大きくして驚いたままだしな。
俺もとりあえず片膝つくスタイルに変えた方が良さそうだな。
いそいそとしゃがみだす。
「デコト・ボーコ、そんな姿勢を取らなくても結構です。他の方も楽な姿勢になりましょう。」
女性は奉られることにも慣れた様子で、俺たちに楽にするよう伝える。
「えっと、初めましてニーケインさん。私、アスカ。よろしく。」
アスカが挨拶をする。クラトスさんとライラックさんが、そんな軽い挨拶なんてこの女性にするなって表情を見せる。
「はい、アスカ。これから宜しくね。」
ニーケインさん? は気にすることなく、笑顔でアスカと挨拶を交わす。そして俺の顔を見ながら話し出した。
「さて、話す時間が限られているので、これから啓示を行います。よく聞きなさい。」
ニーケインさんは先ほどまでの穏やかな口調から、空気がピシャッと音を立てたかのように引き締まる口調と表情で話す。
「デコト・ボーコがこの世界に迷い込んだのと同じタイミングで、魔王もこの世界に現れました。彼の目的はこの世界の侵略。魔王には妥協などありません。魔王はチカラを蓄えている状況です。今のうちに人間も戦いに向けてチカラをつけなさい。」
「魔王だなんて……」
ライラックさんが顔を両手で覆いながらつぶやく。
「ニーケイン様、いつ頃魔王は動き出すのですか?」
クラトスさんがニーケインさんに質問をする。
「質問に答えている時間はありません。」
ニーケインさんがピシャリと言い放つ。
「次にデコト・ボーコ。貴方にはこれから各地のダンジョンへと赴き、封印されている精霊を開放しなさい。精霊を開放していけば剣も強くなり、そして、デコト・ボーコが希望する世界への道が開かれるでしょう。」
「……! 帰れるってことですか!?」
ニーケインさんは返事することなく、俺の目を見ながら力強く頷いた。
「アスカと共に世界を巡りなさい。『道程』のチカラが貴方を導いてくれます。最後に、この世界に祝福とデコト・ボーコの前途に幸あらんことを祈願します。」
そう言うとニーケインさんは目の前で手を組み、目を瞑った。ニーケインさんから光りが溢れ、顕現を使った時のように眩しい光りが辺りを包もうとしている。
「ニーケインさん! 待って! 話しを詳しく聞かせて下さい!」
「ニーケイン様!」
俺やクラトスさん、ライラックさんが話しかけるが光りは強くなって、白い世界に包まれた俺は何も見えなく何も聞こえなくなってしまった。
……デコト・ボーコよ、頑張りなさい。
……また会いましょう。
ささやくようなニーケインさんの声が聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます