会社員はⅩⅧ日目に謎解きをする(回想2)
俺専用の剣?
「デコト・ボーコはディー様のことだが……専用というのは聞いた事がないぞ。ライラックどうなんだ?」
領主のクラトスさんが商人のライラックさんへと尋ねている。
「うむ……この剣は何か特別な剣なのか? 私の簡易鑑定では詳しいことまでは分からんな。」
「ほう! なら、この剣は珍しいものなのだな。」
ライラックさんとクラトスさんが盛り上がってるが、それって実は……
「それ、剣っぽいけど剣じゃないよ?」
アスカがズバッと言った。
「ん? 剣じゃないのか?」
クラトスさんが不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「そうなんですクラトスさん。俺も剣だと思って使っていたんですが、全く切れないくて……しかも、それを使って覚えたスキルは打撃武器スキルだったんです。」
俺は黒い剣を手に入れた後、森でゴブリンを倒した時に覚えたスキルの説明を行った。説明を聞いてクラトスさんとライラックさんが残念そうな顔をする。
「そうか……見た目は黒いが、よく見ると装飾も細かい剣なのにな。切れないとなると観賞用の剣なのか?」
「……観賞用なら戦いの最中に壊れてもおかしくないものだがな……ふむ……鑑定をしてみるか。」
ライラックさんが下を向いてつぶやいた後、俺を見て
「デコト・ボーコさん、この剣を鑑定させてもらえませんか?」
「……鑑定ですか? さきほど鑑定されて俺専用だと分かったんじゃないんですか?」
「いえ、さきほどのは簡易鑑定です。簡易鑑定では品物の名前と状態が判るのですが、簡易鑑定で『???』と表示される品物もあります。この剣もそうでした。さらに詳しく知るためには鑑定をする必要があるんです。」
「最初から簡易鑑定じゃなくて、鑑定したらいいじゃない?」
アスカの疑問はもっともだ。ライラックさんは苦笑しながら
「皆さんにそれを言われるんですが、鑑定をするには準備と費用がかかるんです。それに、良い鑑定結果ばかりじゃありませんしね。」
「費用については領主の私が出そう。ライラックも準備はすぐに出来るだろう?」
「クラトスからの呼び出しだったからね。鑑定の準備は持ってきているよ。」
領主のクラトスさんと商人のライラックさん……阿吽の呼吸って言うんだろうな。お互いがお互いを信頼している感じがいいな。
「ディー様、よろしいでしょうか?」
クラトスさんが俺に尋ねてくる。もちろんだ。
「はい、どんな結果でも受け入れますので、ぜひとも鑑定やってください。」
俺はうなずきながら答えた。この剣がどんな効果があるのか知りたいからな。シークレットの武器だから強いのかも知れないし……ネタ武器って可能性もあるしな。
「じゃあ、さっそく準備するね。」
ライラックさんがカバンをゴソゴソと漁る。取り出したのは、一枚の布だ。
「それは何ですか?」
広げられた布を見ると、中東の高級絨毯のような、煌びやかで複雑な模様が彩られている。
「鑑定に必要な魔法陣だよ。これがないと鑑定が出来ないんだ。」
そういってライラックさんは俺たちに説明してくれる。
「そして、魔法陣の起動に必要なのが魔石だ。」
クラトスさんが拳大の魔石を魔法陣に乗せる。こんな大きさの魔石は見たことがないぞ。
「この魔石は?」
「これか? ワイバーンの魔石だ。鑑定の魔法陣を使うには最低でもワイバーン位の魔石がないと発動しないんだよ。」
へぇ~。ワイバーンかぁ……そのうち戦って倒すこともできるのかな。
鑑定の魔法陣にワイバーンの魔石と黒い剣が乗せられる。
「早速鑑定をやってみましょう。鑑定結果は魔法陣の上に出てくるので、見ておいてくださいね。じゃあ、行きますよ。」
ライラックさんが鑑定の魔法陣に手を置くと、魔法陣が光りだした。淡い光は魔法陣の紋章を浮かび上がらせる。魔石も中心部辺りから光り始めた。魔石全体が光ったと思ったら、魔石から剣へと光りが伸びていった。剣は光りを浴びて、魔法陣の上に鑑定結果を浮かび上がらせた。
「お、鑑定結果だな……何々……剣の名前は……封印されし進化の剣?」
なんだか大げさな名前だなぁ。
「……剣の状態は……精霊が封印されている?」
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