会社員はⅩⅧ日目に謎解きをする(1)
モグモグ……
モグモグ……
俺とアスカの二人は街へと戻って食事を食べていた。
「カグヤの家で食べてたご飯……美味しかったなぁ。」
「そりゃ領主様の家の料理人が作ったご飯だからな。街のご飯と比べるなよ。」
「そうだけどさ……もう少し豪華な食事にしない?チカラ出ないよ。」
「それには今日も働いて稼がないとな。」
「そうなんだけどねぇ……。」
味気ないスープとパンを前にアスカはほっぺを膨らまして、パンとにらめっこをしている。さっきから食事が進んでいない。
「とりあえず腹に入れておかないとチカラでねぇぞ。」
「……はぁ~い。」
「……はぁ。分かった分かった。夕食は豪華にするから。」
「絶対だよ! 約束だからね!」
俺が妥協した途端に勢いよく食べだすアスカ。
「……現金なヤツだな。」
俺はため息とともにテーブルに肘をつき、外に目を向けた。視線の先にはカグヤと俺の黒い剣がいるであろう領主の館が見えていた。
三人でダンジョンから脱出したのはもう5日も前のことだった。
「くっ……アスカ、カグヤ、大丈夫か!?」
「ディー様!」
「ディー!」
白い光に包まれ、目をつぶっている状態であるが、声は届いているようだ。しかし、この光は何だ? トラップなのか?
黒い剣を構えたまま、左手で顔を覆う。それでも白い光は俺たちの目を開けさせないように襲ってきていた。
どれくらいの時間がたったのか。気が付けば白い光は消えていた。しかし、まだ目が慣れるには時間がかかりそうなタイミングで
「お前たち! 武器を下ろせ!」
俺やアスカ、カグヤではない男の野太い声が響いた。
俺たちは罠にかかったのだと思った。盗賊か山賊か。はたまた同業者か。俺たちは武器を下ろすことなく、時間を稼ぐために武器を構えなおした。
「抵抗するなら容赦はしな……あ、あれ? カグヤお嬢様ですか?」
……カグヤの知り合いか?
「……どちら様ですか?」
カグヤが警戒心を露わにしている声で尋ねる。
「領主様の館で兵士をしておりますノーブルです。」
「ノーブル? 確かにノーブルの声のような……でも何でノーブルがここにいるの?」
カグヤが少し落ち着いた声になって訪ねている。
「何でって……ここ、領主様の館ですよ。領主様のお庭から急に白い光が現れたので駆けつけたところ、お嬢様たちが現れたんですよ。何かあったんですか?」
「え? ここは家なの? ダンジョンじゃないの?」
「ダンジョン? いいえ。ここはカグヤお嬢様の家ですよ。」
俺たちは少しずつ目を開けていった。そこには……
立派な建造物に囲まれた庭だった。辺りには兵士らしき人物がチラホラと見える。
「はぁ、はぁ……はぁ……。お、お嬢様。急にお戻りになられてどうなさいましたか? しかも、光に包まれて現れたと……何かあったのですか?」
慌てて走ってきたんだろう、見覚えのある執事が息を切らしてカグヤに話しかけている。
あぁ、本当に領主の館にいるようだ。
……何が起こったんだ?
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