会社員はⅩⅢ日目になってダンジョンへと向かう(2)
「は~い、いらっしゃいませ~。良かったらアイテム買っていってね。」
扉を開けた先には、ラーメン屋の屋台のようなお店が出ていた。
店員は猫耳のついた女性だ。
「あれ? ここってダンジョンの中だよね? お店があるよ?」
アスカが商品を見ながら話しかけている。
「そうだよ。ダンジョンの中だよ~。お客さん、初めてここに来たんだね。ようこそガブニャン商店ダンジョン支店へ。冒険者が泣いて喜ぶ商品ばかりだよ。買取もやってるから、声かけておくれよ。」
そう言って笑顔を見せる店員の八重歯がチャーミングだった。
「……あの、すいません。ダンジョンって初めてで……他のダンジョンもこんな感じなんですか?」
カグヤが不安げな様子で店員さんに聞いている。
「なんだ、お客さんダンジョン初めてなのかい。そうだね、洞窟のままのダンジョンもあるし、貴族の屋敷がダンジョンになったものもあるし、色々だね。ここみたいに外の風景がするダンジョンもあるよ。」
そうなのだ。屋台のようなお店は草原の上に出来ているのだ。
さっき、暗がりを超えて来たはずが、まるで外に出たかのような壮大な平原が目の前に拡がっているのだ。さわやかな風も吹いていて、太陽も空高く上がっている。ダンジョンの中ではなく、どこか別のところに飛ばされたかのようだ。
「これってどうなってるんだ?」
「さぁ? ダンジョンはダンジョンだからね。そんなもんだと思うしかないよ。それよりも商品は買わないのかい?」
「今回は様子見だし、またの機会ね。」
「そうかい。魔物の買取もやってるからね。そっちでもいいからまた声かけとくれ。」
そう言って、店員さんは他の冒険者と話し始めた。
「よし。とりあえず、ダンジョンを探索するか……でも、どっちの方角に向かうのがいいんだ?」
東西南北の方角は分からないが、辺りを見渡すと近くは短い草の平原が一面に広がり、遠くに山、森、平原、荒れ地が見える。
「う~ん……山?」
アスカが頭をひねりながら答える。
「違いが分からないので、目印にしやすい山でもいいのではないでしょうか?」
カグヤも悩みながら答える。
「そうするか。帰りも山を背にして帰ってこればいいしな。とりあえず山を目指そう!」
「はーい。」
「はい。」
俺たちは初めてのダンジョンを歩き始めた。
山へと向かう道のりは順調だった。短い草の平原にはゴブリンがいたが、外に出てきていたゴブリンよりも弱く、俺もアスカ、カグヤも拍子抜けだった。
ゴブリンとの戦闘中に、近くのゴブリンが襲ってくることもあったが、アスカの魔法やカグヤの魔法で近づけることなく退治できていた。
「もっと早く来ていても大丈夫だったな。」
「本当。ダンジョンだからって身構えていたけど、全然ね。」
「ゴブリンが弱いのは助かりますが、他の魔物もいるはずです。気を抜かないようにしましょう。」
「はいはい。カグヤは真面目ね。少しはリラックスしないと疲れるよ。」
「アスカはチカラを抜きすぎだ。」
「はいはい。気を付けま~す。」
「……ったく、まぁいいや。アスカ、カグヤ。まだまだ行けるよな? もう少し山に近づいていこう。ゴブリン以外の魔物も倒しておきたいしな。」
「そうね。そうしましょう。」
「はい、ディー様。まだまだ平気です。行きましょう。」
俺たちは順調に目標の山を目指して進んでいった。
・ノーマルクエスト『ダンジョン探索』
ダンジョン内を探索しろ
成功
成功報酬:無し
・ノーマルクエスト『新人ハンター』
ダンジョン内で討伐とアイテム回収を行う
(魔物討伐 1/2種 ,宝箱回収 0/1個)
成功報酬:100ジョコイン
難易度 :易しい
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