閑話 VR課(5)

「なるほど……ダンジョンか。」


「あぁ。」


ギルド長と話しをしているのは『ハーベスト』の連中だ。


簡易キャンプにいた俺は、『ハーベスト』の連中と一緒に、この街に戻って来た。


戻ってくる時に『ハーベスト』の連中が厳しい顔つきをしていた理由はダンジョンだったようだ。


「どうしますか?」


『ハーベスト』のリーダー、マッパがギルド長と話しをしている。


「……領主様に聞くが、とりあえずダンジョンに入る用意だけはしておいてくれ。」


「了解です。じゃあ、疲れたので今日はこの辺で失礼しますよ。」


「あぁ、助かった。退治してくれた魔物については計算しておく。」


「ギルド長! 多少はまけてよね!」


元気な声で話すのは『ハーベスト』の危険人物であるプリンだ。あいつの沸点が低いのは冒険者の中では有名だ。見た目に騙されて潰された冒険者も多い。


「お前がギルドの備品を壊さないなら考えてやる。」


……潰されたコップも多いな。


「ぶ~。」


「ほら、プリンちゃん。そんな顔しない。折角可愛い顔してるのに。」


プリンを慰めるのは『ハーベスト』の女神、メイ様だ。


「……」


黙ってサッサと帰っていくのはリツだ。


ヤツらを見ながら、俺はメモに『ハーベスト』が倒した魔物を記録していく。魔物の数が多いのは流石、高レベルの冒険者だ。


俺は1枚のメモに目がいった。


「なぁ。」


「ん? どうされました?」


「いや、簡易拠点でお前たちを待っている間によ、新人の冒険者が声をかけてきてさ、お前らの知り合いって言ってきたヤツがいるんだが知ってるか?」


グルン


そんな音がするような勢いで『ハーベスト』の皆がこっちを見てくる。


ギュッ。


肩をすごい勢いで掴まれる。見ると『ハーベスト』のリツだ。


「おい、そいつの名前は?」


「え? ……ちょっ、痛い。」


ギュ~ッ。


「そいつの名前を聞いてるんだ。」


「リッちゃん。メッだよ。落ち着いて。」


メイ様の声かけで痛みは引いていく。メイ様、貴方はやはり女神様ですね。


「名前を教えてもらえるかい?」


そう言ってマッパが話しかけてくる。


「あぁ。えぇっと……デコト・ボーコだな。」


「……そうか……」


一気に潮が引くように『ハーベスト』の連中が去っていく。


「クソが!」


そう言って、プリンは近くにあったテーブルを破壊する。


「おい! 早速、壊してんじゃねぇ!」


……俺、殺される?


「ギルドの人、ありがとう。また何かあったら教えてくださいね。」


俺にそう声をかけてマッパは去っていた。


……あいつらにはあまり関わらない方が良さそうだ。


2日後、『ハーベスト』の連中はダンジョンへと向かっていった。

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