会社員は十日目に簡易キャンプへと向かう(2)
「そうですか……理由をお伺いしても?」
領主のクラトスさんは固い表情のまま理由を聞いてくる。カグヤは、俺からそんな風に言われるとは思っていなかったらしく、驚いた表情を見せる。
「2つほどありますが……まず一つ目は、恵まれたスキルであること。2種類の魔法を使いこなすことが出来れば、有事の際には力強い戦力となるでしょう。」
「たしかに。そうですな。」
「2つ目は……この立地ですかね。」
「立地……ですか?」
「えぇ、街の近くにダンジョンが出来たこの立地で、今後ゴブリン等の魔物に接することなく暮らしていくとなると困難を極めるでしょう。また、簡易キャンプでの戦闘ならば、ゴブリン等に近づかれることなく戦闘が行えます。魔物退治に慣れるには、この機会を生かしてはいかがでしょうか?」
「……ふむ……」
領主のクラトスさんは俺の説明を聞いた後、アゴに手をやり思案気に天井を見つめている。
「……お父様。もう一度、もう一度チャンスをいただけませんか?」
「カグヤ……。」
……よしよし。クラトスさんも迷いだしたな。
折角の機会だからダンジョンにも行きたいし、そのためにはカグヤが魔物に慣れてもらわないとな。さらに、これで『ハーベスト』の皆とも合流出来るはずだ。うんうん。一石二鳥だな。いや、一石三鳥か?
「何頷いてるの?」
アスカが怪訝そうな顔で俺の顔を覗き込む。
「いや、別に。俺たちもレベル上げないといけないなと思ってな。」
「ふ~ん……でも、たしかに仲間に成長ボーナスがつくから、他のパーティーと比べると強くなりやすいもんね。」
アスカも同じように頷いている。
「そうそう、アスカ。成長ボーナスってどれくらい効果があるの?」
「さぁ? カグヤのステータスでも見たら?」
「おいおい……わからないのか?」
「私のスキルじゃないし分かんない。」
アスカはそっぽを向いてしまう。
「ディー様。ぜひ、私のステータスを見てください。」
カグヤが立候補してくれた。そう? じゃあ、見させてもらいますね。
名前 カグヤ
レベル 12
ノーマルスキル
短剣 (熟練度 10/100)
弓術 (熟練度 10/100)
風魔法(熟練度 2/100)
火魔法(熟練度 10/100)
「レベル12ですね。」
「レベル12ですと!?」
……なんでロジャーさんそんなに驚いているの? びっくりするやないですか。
「ロジャーどういうことだ? ディー様はステータスが見れるのか?」
「はい、クラトス様。ディー様はご自分のステータスだけではなく、他人のステータスも見ることが出来るそうです。私が驚いたのは、お嬢様は森に入る前はレベル10だったのが、ゴブリンを4体倒しただけで2レベルも上がったことでございます。」
「ゴブリンを4体だと?そんなものでレベルが2も上がるはずがあるまい。」
「それがディーのスキルの影響ね。」
何故か誇らし気にアスカが応えている。
「ディー様は他人のステータスも見れるのですか?」
「はぁ、なんか見れました。あっ、ちなみにですが、風魔法は熟練度が2で、火魔法の熟練度は10まで上がってましたよ。」
「……ディー様、カグヤと共に簡易キャンプにて魔物の討伐にご協力とお力添えの程、宜しくお願い致します。」
領主のクラトスさんは頭を下げる。それに続いて、カグヤ、セバスさんも揃って頭を下げてくる。
「頭を上げてください。提案したのはこちらなので。」
よし、これから頑張ってゴブリン退治だ。簡易キャンプで『ハーベスト』の皆に会えるといいな。
・シークレットクエスト『森の原因究明』がノーマルクエスト『ダンジョン探索』へと変更になりました。
・ノーマルクエスト『ダンジョン探索』
ダンジョン内を探索しろ
成功報酬:無し
難易度 :易しい
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