閑話 VR課(4)
「こんなこと……聞いたことねぇよ……」
VR課の会議室は重苦しい空気に包まれていた。
それは部長の持ってきた書類に対してであり、それを見たVR課の反応は同じだった。
辞令
山田俊輔 殿
貴殿には
政府国際協力機構への
出向を命ずる
以上
「部長……」
部長は腕を組みながら目をつぶって黙っている。
「……何とかならないのですか?」
マッパの問いかけに部長は重たい口を開いた。
「……ならない。」
「何故!?」「イミフだよ部長。」「なんでですか〜?」
「これは会社が決めたことじゃないからだよ。」
皆が首を傾げるなか、部長は腕を解き机に肘を付いて、目の前で両手を重ねて、VR課の一人ひとりに目を合わせながら話しを続けた。
「この決定は僕の権限が及ばない所で決定された。使えるコネは使ってみたが、誰がどこで決定を下したのかさえ、分からない。」
VR課の皆が目を見開いた。
「重ねて言うよ。これは会社の決定ではない。それに彼は巻き込まれた。僕たちでは手の出しようがない。」
「そんな……」
LEDの灯りが点滅を繰り返す音のみが、会議室を包んでいた。
「しかし、彼はVR課で働くことを希望しているそうだ。そして数年後には帰ってくると会社は言っていた。」
ガバッ!
勢いよく響く音と共に、世界が回りだした。
「なら、僕たちのできることは何だろう? そう、彼の居場所を残してあげることじゃないかな?」
「やってやりましょ〜」
「ハハッ。いいねぇ。」
「おぉ。メイ姉とリッちゃんがやる気だぉ。プリンもやるよ〜!」
「なるほど……これは頑張らないといけませんね。」
「うんうん。皆の表情が良くなって僕も嬉しいよ。」
部長も笑顔に話しかけてくる。
「そうそう。最後に不思議な話しがあるんだけど、聞いてくれる?」
瞳にチカラの戻ったVR課に部長は尋ねた。
「異世界ってどう思う?」
怪しい瞳を輝かせながら。
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