会社員は八日目で出向と知る

光りが弱っていき、目を開けることが出来る

まで、俺は目をつぶったまま、突起を握った姿勢で固まっていた。


(……女神が急に消えていったから聞きたいことが聞けなかったぞ。)


「あぁ、眩しかった。」


アスカが目をシパシパとさせている。


突起を掴んでいた魔力の素は手元から消えていた。


「ディー殿、いかがでしたか?」


領主が尋ねてくる。


「……ニケ様と言われる女神様に会いました。」


魔力の素を掴むと光りに包まれ、白い空間でニケと名乗る女神に会ったことを伝えた。


「な、なんと……」


話しをする内に、領主とカグヤ、ロの顔が驚きの表情に変わっていった。


「……で、では、ディー様が招かれし英雄なのですね!」


カグヤが憧れの人物を見るような笑顔で話しかけてくる。


「招かれし……何ですか?」


「招かれし英雄です、ディー様。有名な物語にもなっており、招かれし英雄は様々な逸話を残されているんですよ。」


……それでか。領主様を含めて、皆の顔色や対応が期待する何かに変わった気がするな。


「ディー。これ、女神から預かったよ。」


アスカが俺に声をかけてきた。アスカの手元には茶色の封筒に『ディー様へ』と書かれている。


「それは……女神様からの授かりものですね! とても神々しいです。」


カグヤは手を胸の前で組みながら感激した表情を見せている。


女神からの手紙と聞くと神々しいのかも知れないが……俺には百均で買える封筒にしか見えないから、全く神々しさは感じない。


「とりあえず、開けてみますね。」


封筒を開けると中に手紙が入っている。


『ディー様へ

 お伝え忘れてましたが、

 ステータスが見れるようになりました。

 頭で念じるとステータスが見れます。

 魔力の素で手に入れた能力もあります。

 ご自身で確かめてみて下さい。

               ニケより』


……やっぱりチートみたいなものは貰えないんだな。少し残念な顔をしていたんだろう


「ディー様、何て書いてあったんですか?」


カグヤが少し不安げな声で尋ねてくる。


「ステータスが見れるようになったと書いてありました。」


「ほ、他には?」


「魔力の素で手に入った能力もあるそうです。」


「それはおめでとうございます。では早速、ステータスを見てみませんか?」


……そうだな。ステータスを見てから、今後をどうやっていくか考えるか。


そういえば、現実世界に戻れる方法を聞くのを忘れたな。また女神様に会えるかな……


俺は周りの期待に答えるために、口に出して言う。


「ステータス」

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