会社員は八日目に領主様とお近づきになる(1)
はい、おはようございます。
もう街に入りました。
あれよあれよと言うている間に、助けたのは領主の娘さんで、
家に招かれ、食事をいただき泊まっていくことになりました。
…正直、記憶にありません。料理の味も覚えていません。
「いいんだろうか…」
「いいんじゃないの?」
客室で寛いでいるのはアスカだ。
「急展開すぎてついていけてないんだが…」
「人生ってそんなもんよ?」
…スキルから生まれたはずのアスカが人生観を語っている。
「まぁ、そんなもんか。」
難しく考えても分からないものは分からない。
コンコン。
「はい。」
「失礼します。応接間で領主様がお呼びでございます。」
これぞ執事!って感じの男性に導かれ、応接間へと向かう。
「おぉ、ディー殿。昨日は寛げましたかな?」
声をかけてきてくれたのはこの街の領主様でお姫様のお父さんだ。
「はい。とても快適で素晴らしい時間を堪能できました。感謝いたします。」
「固いなぁ。昨日も言ったけど、冒険者なんだから礼儀なんて気にせずに、もう少し楽にしてくれていいぞ。」
そう言ってくれるけど、昨日のことあんまり覚えてないです。
「私はこの話し方が慣れているので…」
「そうか。まぁそれならいい。君たちを呼んだ理由は、2つあってね。先ずは…私の娘を助けてくれたことに対する褒美だ。こちらを受け取ってくれ。」
そう言って、執事が両手で布に包まれた物を、うやうやしい態度で運んでくる。
「その中には魔力の素が入っている。使えば魔法を覚えるだろう。どんな魔法を覚えるのかは使ってみないと分からないがな。」
ま、まほう?…魔法!魔法だって!?
ますますゲームっぽいな。
…本当にこれ、会社の仕事なんだよね?
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