会社員は七日目に人を助ける

「キャー!」


「!悲鳴だ!」


「ディー、あっちよ!」


街道沿いから馬車が1台道を外れて横たわっている。


走って近づくと、ゴブリンが5匹で馬車を囲んでいるのが見えた。


背中を向けているゴブリンに斬りかかる。


「ごぅぉりゃ~!」


ゴブリンを一撃で仕留めた。残りは4匹だ。


「助かる!」


馬車を守っていた騎士が声をかけてくる。


ゴブリンは予想外の攻撃に俺達と馬車を交互に見て、オロオロと慌てだした。


「…シッ!…てぁー!」


その隙をついて騎士がゴブリンに近づき、剣を振る。


ゴブリン体が倒れた。騎士の剣を振る速度が早すぎて剣筋が見えない。


…これ、助け必要だったか?


残った2体は持っていた武器を捨てて、背中を向けて必死に逃げ出した。


俺達も騎士も追いかけることなく、ゴブリンが去っていくのを待った。


そのまましばらく待ったが、敵の増援が来ることもなく、騎士が息を吐いて警戒を解いた。


「ふぅ~。手助け助かった。感謝する。」


「あぁ。気にしなくていい。間に合って良かった。馬車はどうする?」


「今から中に乗っている人を救出する。さっきまで救出していたのだが、その間にゴブリンが近寄ってきてしまってな。」


「なら、救出が済むまではここにいるから、早く助けてあげよう。」


「助かる。今からドアを壊して開けますので、ドアから離れてください。」


騎士がそう言って、馬車のドアを叩き壊す。


馬車の中に手を伸ばし、誰かを引っ張りあげる。


「…え?」


馬車から出てきたのは、お姫様だった。…たぶんお姫様だろう。


会ったことがないから貴族の娘かもしれないが、ドレスを纏っており、華やかな雰囲気を醸し出している。


「私はカグヤと申します。貴方が、ロジャーを手助けしていただいたおかげで助かりました。お礼を申し上げます。」


お姫様はドレスの裾を持ち、頭を軽く下げる。そんな何気ない仕草も様になっている。


「僕はディーって言います。彼女はアスカ。カグヤさん、気にしないでください。僕らがいなくても騎士様が充分に対応できましたし。」


「いや、私だけでは馬車が攻撃されて、カグヤお嬢様を危険にさらす恐れもあった。応援は本当にありがたかった。」


そう言うと、ロジャーと呼ばれた騎士は兜を外して、お姫様と同じように頭を下げる。


イケメンとお姫様って…神様は本当に不公平だな。


「お二人とも、頭を上げてください。そこまで気にしてもらわなくても大丈夫なので。失礼します。」


日本人らしく?頭を下げて通り過ぎようとすると、


ガシッ!


ロジャーさんに腕を捕まれる。


「…あの、何ですか?」


「…このまま何もせず帰すわけにはいけない。街に戻るのであれば、我々を護衛してくれないか?街に戻ったら護衛の分も含めてお礼を渡そう。」


「ロジャー、素晴らしいわ。ディー様とアスカ様にお礼もせずに帰すのは失礼になります。実家でお礼をさせてください。」


「いや、本当に大丈夫ですから…」


「ディー、お礼くれるんだから貰っとこ。私達まだまだ駆け出しでお金に余裕ないよ?」


「そうだけど…(そんなん言うなよ、恥ずかしいだろ)。」


「あら、ディー様は冒険者になられたばかりなのですか?では、是非とも私の実家にあります武器をお礼に差し上げますわ。きっとディー様なら使いこなせると思いますよ。」


「カグヤお嬢様、名案ですな。では、馬車が使えないので、徒歩になりますが、街までの護衛をお願いします。」


…トントン拍子に進んでいるけど…まぁ、今から街に帰るんだから、どっちでも一緒だな。


「…分かりました。冒険者成り立てなので、あまり役に立たないと思いますが護衛を受けます。」


「ディー様、ありがとうございます。」


「ディー殿、助かります。私が先導しますので、アスカ殿がカグヤお嬢様と真ん中。ディー殿が後方をお願いします。」


「分かりました。」


初めての護衛依頼が始まった。


街まで無事につけるのだろうか…


・緊急クエスト『森の様子を探る』

  森の周りを歩いた。ギルドに報告しよう

   成功報酬:魔力の素

   難易度 適正 → 易しい

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