17 オリジン-6-
「お前たちが理解できるとは限らない。それに理解できたところで意味はない」
「それは聞いてからだ。子どもを誘拐しているのはお前か?」
「教育の徹底が図れていないようだ。そのような表現を学んだのか?」
「言い方はどうでもいい。お前がやっているのか?」
「我が指示している」
「なぜ子どもだけなんだ?」
「適性を見極めるのに最大1年を要する制約上、止むを得ないことだ。だが人類には必要なことなのだ。目的達成のためには」
「人類……目的…………?」
ずいぶんとスケールの大きな単語を持ち出したことにカイロウは首をかしげた。
この物言いはクジラ教に似ている。
あれこれともっともらしい言葉を並べ立てながら、最後は人々のためになると暗に脅しをかけるのだ。
「我の目的は人間の適切な維持管理だ。管理とは人口、文化レベル、技術水準の他、あらゆる自然的、人工的要素を含意している」
つまり重大な仕事を任されている、という程度はリエにも理解できた。
が、その内容が広範すぎてすぐには呑み込めない。
「壮大な話だが正直、信じがたいな。お前を作った者に会いたい。本人に直接訊ねたほうが早い」
彼が思うにオリジンは遥か未来の産物だ。
地上の知識や常識では到底追いつかないような技術やメカニズムが組み込まれているハズである。
あの方舟にしてもクジラにしても、同じ物を今の人間が造れるとは思えなかった。
だがオリジン自身が作られたと言っている以上、製造者は存在する。
彼はその人物に会いたいと強く思った。
「それは不可能だ。遠い昔に死んだ」
ロボットは人の死を悲しまない。
たとえそれが生みの親であろうと、まるで日常の些細な出来事のように簡潔に話す。
「いや、いや……死んだというのほ本当だとしよう。遠い昔というのはどういうことだ?」
「言葉のとおりだ。彼らはもういない。我は与えられた命令に従うだけだ」
ますます分からなくなる。
判明していることを繋ぎ合わせようとしても、それらは離れすぎていてとても結びつかなかった。
「だったらいつ作られたか訊いてみてはどうですか?」
声域が安定しないと言われたことを気にしているのか、リエが拗ねたような口調で促した。
「ああ、そうだな。お前はいつ作られたんだ?」
「39879年前だ」
2人は互いに顔を見合わせ、笑った。
ロボットにしてはとても面白い冗談だったから、きっとオリジンは場を和ませてくれたのだろう。
笑いは会話を円滑にする。
「菓子でも持って来ればよかったな」
「それに飲み物も。箱庭まで戻って川の水でも汲んできましょうか?」
「ああ、それがいい。木の実も生っていたな。あれも採ってこよう。お前は……水だと壊れるな。飲み物は機械油でいいか?」
オリジンはかぶりを振った。
「そ、そうか、ロボットは電気があればいいからな。ああ、そうだ! もう一度訊こう! 今度は正直に答えてくれ。お前はいつ作られた?」
「39879年前だ」
オリジンは頷いた。
カイロウはリエを見た。
リエもカイロウを見た。
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