14 叛乱-4-

「うん、今日は来客が、多いな。孤独で憐れな年寄りへの気遣いかな?」

 デモスはドアの覗き窓から外の様子を窺った。

 飄々としていた彼の表情が一瞬にして固くなる。

「カイロウ君。きみが持ってくるのは、あの燃料の対価だけかと……だがどうやら、うん、そうではないらしい」

「どういうことです?」

「つまり……つまりだ。儂は対価を求めておる。正当な……対価だ」

 デモスはドアから離れた。

 その途端、何かがドアにぶつかってきた。

「面倒事――きみの言い方ではトラブルか……それを持ち込んだことへの、な」

 重く固い物がドアを激しく叩く度、壁が震動する。

 ノブの辺りがひしゃげ、留めていた金具のひとつが落ちた。

「主は儂だからな。応対は儂がしよう。きみたちは今すぐ裏口から出なさい。頃合いを見計らってここから離れるのだ」

「デ、デモスさん――それでは……」

「大方、役人に都合の悪いことでもしたのであろう?」

「じゃあ外にいるのは……?」

「まあ、こうなった責任の一端は儂にもある。そのツケが回ってきたと思えばいい」

 再びドアが打ちつけられ、錠前が吹き飛んだ。

「あとで修理代を払ってもらうぞ。急げ!」

 彼の豹変ぶりにリエは惑った。

 あの持って回った口調を忘れてしまったみたいに溌溂としている。

 半分寝ているような双眸がはっきりと見開かれ、もって事態が切迫していることを告げていた。

 デモスに突き飛ばされ、2人は転がるようにして裏口に続く扉に向かった。

 その扉が閉じられるのとほぼ同時に、正面のドアが蹴破られる。

 まず入って来たのは3人の役人。

 うちひとり、鉄槌を持っていた男は呼吸が乱れている。

(ずいぶんと荒っぽい来訪だな)

 デモスは呆れたように欠伸した。

「お役人というのは、正しい訪問の作法を……教わってはいないのか?」

「作法など不要だ」

 最後に入って来たのはテラだ。

 相変わらず黒いコートで身を包んでいるが、隙間から金属製のプレートが覗いている。

「男が来ただろう?」

 彼はデモスを睨みつけた。

「その前にだな、壊した扉について……何か言うべきではないかな? これでは雨風がしのげん……老体には、堪えるな」

「忠告をしたハズだぞ」

 話はまるで噛み合わない。

 テラは明らかに苛ついていた。

 どうにかはぐらかす方法はないかと思案したデモスだったが、その射抜くような視線に陳腐な誤魔化しは無意味だと悟った。

「経緯くらい聞いてもよかろう」

 まだ惚けたような口調の彼に、テラは舌打ちした。

「ある調達屋から通報があった。クジラ様に盾突こうとする不届き者がいる。以前からここに出入りしている男と関連がある」

「なるほどなるほど。つまり、こういうことだな。お前はその不確かな情報を鵜呑みにして、扉を壊したというワケだ」

 カイロウは扉の隙間から様子を窺っていた。

(ダージが密告したのか……!)

 さすがにこれはショックだった。

 クジラに対する考え方が決定的に違っても、自分を売るようなことはするまいと信じていた。

(だから私の家に押しかけてきたのか)

 運が良かった、と彼は思った。

 もし自宅にいたら連行されるか、その場で処刑されていたかもしれない。

「確かな情報だ。隠せば家族に危険が及ぶと言えば、たいていは真実を語る。訊いていないことまでな」

「それは脅迫と言うのだ。許されることではない」

「雇い主の許しがあればいい。これからすることもだ」

 テラは室内を見渡した。

 不審な点はない。

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