第38話 火の八日間、一つの冒険が幕を引く噺

 二日間の湯治を終え、王宮に戻ったウイック達。


 謁見の間にて女王と側近のエレノアが内謁する。


「この度は大変世話になった。お主達のお陰で神聖樹の洞を大掃除できて、謎の襲撃者も追い払う事ができた。あのドラゴンには驚かされたが、お陰で良い物も見られたからな」


 人的被害はもちろん、物的な被害もほぼ無いと言っていい終結は功績として大きい。


 金銭的報酬は十分すぎるほどもらった。ミルとイシュリーは新しい衣服を、ウイックは錬金術の素材となるレアアイテムを数多く貰い受けた。


「それがお前の探し物か?」


 ウイックはティーファ女王にメダリオンを見せた。この世界にあった秘宝を持ち出す許可を得るためだ。


「それは構わんが、それなら我が城にも一つ、似たものがあるぞ」


 国宝の一つと合って、もらい受ける事はできなかったが、見せて貰い確認できた。


「間違いない。俺が探している物の一つだ」


「すまんがやる事はできんぞ。だがしかしこれらを全て揃えたら、またここに来るといい、所謂儀式具の一つなのであろう? 貸し出しは私の名に賭けて約束してやろう」


 この国、この世界での用事は済んだ。


 できればこの国のメダリオンにも刻印を刻んでおきたいところだが、まだ適合者を見つけられていないので、次の機会を待つ事にしよう。


 昨日と一昨日で、この国の騎士団員のほぼ全員を調べる事が出来たというのに、アタリを引けなかったのは……そんな全てが都合良くは行かないという事だ。


「なんか名残惜しいな。結局私はあまりお前達と話をする時間も取れなかったからな」


 初日の宴の席を一緒にしたのが最後だから、確かに十分な時間ではなかったと言えば、そうなのだろう。


「昼食までまだしばらくあるな。のぉウイックよ。少し私に付き合ってくれるか? なに、手間はさほどとらせんよ。そこの私専用の控え室に場所を移そうではないか」


 この日の昼食を頂いて、獣王の神殿に戻る予定の一行には、ほんの一時だけ時間が許されている。


 ウイックは首を縦に振り、ティーファの要望でミルとイシュリーを残して、別室に移動した。


「控えの部屋って割には立派だな。さすがは女王陛下様専用の部屋だな」


 冒険宿の一部屋の三倍くらいはある広さに、豪奢な調度品と、大きな天蓋付きベッドが中央にある。ここが普段の寝室だと言われても納得の豪華さだった。


「ここに座れ」


 ベッドに誘いを受け、ウイックは遠慮なく靴を脱いで乗っかった。


「そのなんだ。エレノアや、うちの騎士団員達に行ったあれ」


 ウイックは温泉に行ったとき、紅玉ら三騎士団のみならず、後から来た別の団員達全員とスキンシップを行った。


 今ティーファが望んでいるのは正にそれだろう。


「俺は別に構わんが……」


 それは願ってもない申し入れだ。もしかしたら女王陛下がそうであれば、メダリオンの刻印を刻めるかもしれない。


 “操体そうたいの秘術”は、それを受ける者とウイックの相性が良いか、或いは気持ちを通わせている必要が求められる。


 ティーファとの相性はどうあれ、ここの誰よりもウイックに感心を持っている事は明確なこの少女なら、絆を繋ぐ事ができるかもしれない。


「それじゃあ、あれだ」


 ウイックが目の前の少女の絶壁に目を向けると、その視線に言わんとするところを察したティーファは、気を集中させてマナをコントロールする。


「これならどうだ?」

「おお!」


 ウイックの興奮度が急上昇する。


 見た目で言うなら20歳前後、体付きは申し分ない、放漫な胸とぷっくりとしたお尻がとても魅力的だ。


 ウイックは無防備に体を預けてくる女王陛下の背中に回り、淫行行為を始める。


 それは直ぐに手の平に伝わってきた。


 メダリオンはティーファが持っている。条件は満たされた。これで本当にこの国での用件は完全に完了した。


 二人はそのまま朝食の準備が調い、係の者が呼びに来るまで寄り添い続け、名残惜しそうなティーファだったが、何もなかったように食堂へ移動して、会食を楽しんだ。


「これでお別れだな。私が女王ではなければ、お主らの旅に同行するところだが、そうもいかんしな。だからたまにで良い。またこの世界を訪れてくれ。いつでも歓迎するからな」


 行きは3人だったポータルまでを、大勢の騎士団に見送ってもらい、転移門をくぐり、獣王の神殿に戻ってきた。


「今回は収穫も多くて有意義なクエストだったわ。さぁしばらく休ませてもらったら、また情報収集しないとね」


「いやなんだ、収穫が多かったと言っても、それは俺の物ばかりだったし、なんか悪かったな」

「何をいまさら」


「まぁ、もしメダリオンの情報が手に入ったら、その時はまたよろしく頼むわ」


「待った。あんた私と契約した事忘れたの?」

「えっ?」


「まさか自分だけおいしいとこ持って行って、私のクエストを手伝わない気じゃあないでしょうね?」


 二人が手を組むのは今回だけ、ウイックはそう思っていた。なによりミルがこんな面倒事を背負い込みたくはないだろうと。


「手伝うのは構わんが、本当にいいのか?」


 お互いメリットは十分ある。ミルの目利きと洞察力、ウイックの知識が咬み合えば、より効率のいい秘宝ハントができるだろう。


「分かったよ。俺たちはパーティーを組む。そう言う事でOKだな」


 握手を求めるミルの右手、ウイックも右手を出し、その手は迷わず福与かな胸に押し当てられた。


 行き場を失った右手は男の首に、軽くひねって喉仏を握りつぶしてやった。


 彼らなりの握手を最後に、一つの探遊記に幕が引かれた。

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