fragment:27 初夢監視員
獏に教えてもらった話。
一年に一度、この時期だけ仕事をする監視員がいるらしい。
彼らが監視しているのは発電所の制御機器でも、大学の正門でも、誰もいないプールでもなく、初夢だそうだ。
普段は個人の見る夢なんて放っておく。頭のなかは治外法権だからだ。ただまあ、せめて初夢くらいは、ということで彼らが駆り出されるようになった。
監視員たちは夜のあいだ宙を飛び交う初夢を監視する。そしてひどい内容のものが見つかったら、それを見ている人の元へ迅速に獏を派遣する。獏は代わりの吉夢を背中にくくりつけてお宅訪問、ということらしい。大好物の悪夢にありつけるから、忙しくても獏にとっては悪くない仕事だそうだ。
ちなみに、現代で一富士二鷹三茄子を見る人はかなり稀らしい。レアな夢もやはり美味いのだけれど、ひと口でも齧ったら即解雇、と獏たちは厳命されているので手出しはできないということだった。
ひと晩かけて膨大な数の初夢を見守るから、監視員は高給取りだ。そして翌朝、彼らはくたくたになって毛布にくるまり、一日遅れで初夢を見る。
それが悪夢だった場合はどうなるのかと訊くと、獏は首を振った。みんなあまりに疲れて眠るから夢なんか見ない、ということだった。
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