第1話エピローグ はじまりの光【産光】

            *



 一連の出来事から一刻が過ぎた頃、ルピス王国からの援軍が到着した。


「こっちだ!メル殿が気絶している、担架急げ!」

 慌ただしくあちこちで、怪我人の救護が始まったようだ。

「キャンティーさん!待って!あなたはまだ……もうッ!」

 意識を取り戻し治療を受けたキャンティーは、救護師の静止を振り切り、ルーの元へと歩いていった。

 ルーの元にたどり着くと、そこには一人の白髪の老人が立っていた。

「ギャレットさんもいらしていたんですか」

 キャンティーがそう声をかけたのは、ルピス王国の第二十八代国王、ギャレット=ドラ=ムーラトである。

「おぉ、キャンティーか。怪我は大丈夫なのか?」

「ご心配なく。あたしは大丈夫ですよ。ただ……」

 キャンティーは今まさに救護隊によって担架に乗せられ、運ばれているキノの方を見た。その顔には白い布がかけられている。

「キノのことは非常に……残念だった。彼には色々と背負わせてしまっていた。感謝してもしきれないよ……」

 そう言うギャレットの目には薄らと涙が浮かんでいる。

「ギャレットさん、あたし……決めましたよ」

 キャンティーはルーの顔を見下ろしながら言う。

「ほぅ……なんだ?」

「あたしが、ルーを……」

 地下世界を巡るように吹く春風と共に、生まれたての小さな光の粒が宙を舞う。ヒカリサンゴの産卵である。

「……そうだな、それがいい。キノもきっと喜んでくれるだろう」

 ギャレットは上を向いてそう言った。その頬を伝う涙は、光の粒と共に彼方へと舞い去っていった。



 

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マザーズ 【光と闇の物語】 バスロマン @Basuroman

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