END ROLL

 本稿のエンドロールとして、やはり百合アニメを紹介しよう。TVアニメ『えんどろ~!』にはローナ姫というとんでもないレズが出てくる。お姫様であるローナは、ずっと勇者に憧れを抱いており、自分の前に現れた勇者であるユーシャに一目惚れをする。私の勇者様!と崇拝し、権力を濫用し法を捻じ曲げてでも結ばれる事を望んでいる。


「勇者様のお嫁様になるのが夢でした…その勇者様とこうして本当に出会う事が出来るだなんて…」

「でもあたしたち女の子どうしだよ?」

「愛の前には些末な事ですし、法律程度ならなんとでもなります」


 ローナ姫の初登場は5話『私の勇者様~!』であり、本節では、8話『私のユーシャ様~!』と合わせて紹介し、エンドロールを彩っていく。


 とんでもないレズのローナ姫は、勇者であるユーシャに憧憬を抱く。勇者である彼女と、そうして姫である自分の関係性を夢想する。姫とは魔王に攫われ、それを勇者に救い出されて、そして結ばれる……。そんな役割に夢を見ている。わりと平和な世界で、ユーシャは授業を受けたり、ショッピングをしたりで、わりと普通の女の子のよう。


 ゆえに、もっと勇者らしい活躍を見たいと、魔王の生まれ変わりであるマオに相談を持ちかける。自分が魔王に攫われたという嘘の劇場を演じ、勇者に助けられる姫の物語を上映しようというのだ。シェークスピアのテーゼを地で行くローナは、まさしく恋に恋する暴走少女という典型的な病にさいなまれている。


 魔王にローナ姫が攫われたと聞いた勇者PTは、姫を絶対に救い出そうと奮闘する。その姿を魔法の水晶玉越しに見てはしゃぐローナ姫。マオは全部ヤラセじゃが…と呆れつつも共感する。軽々とモンスターを倒していくユーシャ達を見て、勇者にはそれに相応しい試練が必要と力説するローナ。そんなローナに呆れつつも、マオは付き合い、魔王として再びユーシャ達の前に君臨し、問う。「何故姫を求める?富か、地位か、名声か?」「勇者だからか?魔王を倒すのは勇者の定めだからな!」


 それに対し、ユーシャはこう切り返す「お姫様だからとか、勇者だからとか、そんなの、関係ない。ローナちゃんは、ローナちゃんは私たちの大切な友達だから!だから助けるんだ!」


 その言葉を聞いたローナは、いつだってユーシャは自分のことを<姫>ではなく、ローナと呼んでくれていた事に気付く。そして雌雄を決しようとするマオとユーシャに、自分がマッチポンプを行っていた事を告白する。<姫>と<勇者>に囚われ、本当の現実を見ていなかったと懺悔する。ユーシャ――ユーリア・シャルテッドに理想の勇者を重ねて、本当のユーシャを見ていなかったことを。それを――「良かった。ローナちゃんが本当に攫われたんじゃなくて!」と朗らかに返すユーシャ。本当に魔王が現れてローナを攫っても、助けにいくからと宣言する。


 それから、ローナ姫はユーシャの事を勇者様ではなく、ユーリア様と呼ぶようになったが、ユーシャに手を掴まれて――「はい、私のユーシャ様!」


 勇者、確かに憧れを引き起こす響きだ。だがそんなものはいないのだ。

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