第40話 実行
「肉料理」
メイド達は扉から出てきた。
さっきと同様に注意深く観察する。
チャンスは一度きりだ。
右から3番目、背が少し低いメイドが、他のメイドに比べるとお皿から顔を離していた。
それに、目も細めているような気がする……。
きっと、きっとこの人が毒入り料理を運んでいる。
私はココに伝えた。
ケケは小さく頷くと、私がココが伝えた通りの皿をヌヌへと選んだ。
私達は一斉に料理を口の中にいれた。
約3秒後、ヌヌがフォークを落とした。
喉をおさえると歯を食い縛りながら床に倒れた。
歯の隙間からは泡が溢れている。
ヌヌはケケを睨んだ。ヌヌの目には怒りと恐怖があった。
その目が私をとらえているような気がして、私は目を背けてしまった。
私は、本当に卑怯な人間だ。
ヌヌが死んだ後、辺りは静寂に包まれた。
私は聞こえているであろうテテへ叫んだ。
「ルール違反を判断するヌヌは死んだ。次の試練までメイドは変えないんでしょ?
私達はこの部屋を出てもいいよね?」
ガチャッと放送がはいる音がした。
「なるほど!ルールを逆手にとった鋭い質問だね。
……いいよ。もう食堂にはルール違反を判断する人がいないんだから」
次へと進む扉が開いた音がした。
私はケケに謝った。
「ごめん、ケケ。手を汚させてしまった。ごめんなさい。そして、ありがとう」
ケケは首を横にふった。
「あのまま試練を続けていれば、ココが死ぬことになっていたのである。だから、こちらこそありがとうなのである。3人死んだだけで済んだし、結果オーライである」
ケケは微笑んだ。
「そういってもらえるとありがたいよ。
ケケは本当にココを大切に思ってるんだね」
「もちろんである! ココを守るためならなんでもするのである!」
……なんだかケケが心配になってきた。
「自分の命も大切にしてね。ココのために自分の命を粗末にするようなことがあったらダメだよ」
「なんでダメなのであるか?」
「え?」
「ココは僕の全てである。僕はココ以外を求めないし求める気もないのである。
ココのためにかけるのが僕の命なら安いものである」
やばい。ケケの目に光が見えない。
あまり深入りしないほうがいいのかもしれない。
「何をしているの?扉が開いたわよ」
ナナに声をかけられて、私とケケは扉へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます