第34話 試練

食堂での試練はすぐには始まらなかった。

他の参加者が来る可能性を加味してのことだ。

メイドが言うには、この試練は一度始めると時間がかかるため、後から来た他の参加者は待つことになる。また、人がたくさん参加した方が良い試練らしい。


私達は5分待った。すると扉が開いて、3人の男性と2人の女性が食堂に入ってきた。

「5人はチームを組んで、試練を突破してきたのかな?」

メイドが質問した。その質問に一番体格がいい男性が答えた。

「いや、違う。俺の近くにいる3人は協力したが、そこにいる男2人はついさっき会ったばかりだ」

「俺たちは3人だった。だが、1人死んだ。

それがどうした?」

「いや、特に深い意味はないよ。気になっただけ」

メイドは私達にしたような話を5人にした。


「それではルール説明をするよ」

メイドは紙を読み上げた。

「食堂での試練は食事をするだけ。

前菜、スープ、魚料理、肉料理、サラダ、チーズ、菓子、フルーツ、コーヒー、焼き菓子の順で料理が出てくる。いつもはシャーベットもあるんだけど、今回は無し。

どれも、王様のお抱えシェフが作る、天下一品のものだ。

しかし、それぞれの料理に1つだけ、毒が入っている。毒は致死性のもの。

ルールは至ってシンプル。

食堂内にいるものは席につき、メイドが持ってくる料理を少なくとも一口は食べること。

メイドは料理を持ってきた直後、並んで立つ。自分でメイドを指名して料理をもらうこと。

試練の間、参加者は部屋から一歩も出ないこと。

分かっているとは思うけど、ルール違反はいけないよ。

ルール違反かどうかは全て私が判断するからね。

以上」


これは試練と言えるのだろうか。

ただの殺人ゲームなのではないだろうか。

料理の数が10に対して、この場にいる人数は9。

つまり、全員が死ぬ。

『少なくとも一口』というのは、死んだ人が必然的に食べ残すことを配慮してだろう。

どうする……。どうすればいい……?


「それでは始めるよ」

「ちょっと待って!」

私はメイドの言葉を遮った。

「今から始めるところだったんだけど……。

どうしたの?」

「ルールにさ、『食堂内にいるものは席につき』ってあるけど、それってメイドであるあなたも含まれるよね?

あなたも参加した方がいいんじゃないの?」

このメイドが参加しても全員が死ぬことは回避できないが、一回一回の確率が下がる。

「え?」

メイドは私の言葉を全く予想をしていなかったらしく、瞬きを繰り返していた。

「いや、でも……。

私が参加!?

いやいやいや、そんなことは許されるはずがない!

そうだよね?テテ!」

メイドが叫ぶとテテの声が放送で聞こえてきた。

「うーん。どうしよっかなー。

じゃあ、ルールにも書いてあるし、参加で!」

メイドは信じられないといった風に口をぽかんと開けていた。

「わ、私が死んじゃったらどうするの?」

「そしたら、次の試練からは代わりのメイドを支給するだけだよ!」

メイドはよろめいた。

しかし数秒後、口の端をきゅっと結んで、まっすぐ立った。

「了解!側近の命令は王様の命令!

このヌヌ! しっかり承った!」

メイドは席につき、開始の合図をした。




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