第33話 食堂
扉を開けると、黒いカーペットが敷いてある廊下に出た。
一本道だ。
奥には食堂へと続く扉が見える。
「食堂ではどんな試練が待ち受けているのかしら?」
「宝探しのように簡単だといいのであるが……」
「ネネ! 危ない!!」
「え?」
食堂の扉まで半分を切ったとき、ナナが急に叫んで、私の袖を引っ張った。
下を見ると床がない。黒いカーペットのせいで分からなかったが、床には穴があいていた。随分と深い。落ちていたら確実に死んでいただろう。
私はナナにお礼を言い、他の穴に落ちないように慎重に歩いた。
「人、いっぱい落ちてる」
ココの言葉につられてそれぞれの穴をよく覗くと、何人もの人が底深くに折り重なっていた。
「試練は移動中も続いているということね。気を引き締めて行きましょう」
「了解なのである! ……ってネネ、大丈夫であるか?」
「う、うん……。なんとか……」
私の膝はわらっていた。死ぬかもしれない。その恐怖は、私が想定していたよりもずっと強いものだった。
私はなんとか足を踏み出して前へ進んだ。
食堂の扉は門のような形式で、手前に開く作りだった。
中央に大きな長いテーブルが1つあり、壁には高級そうな絵画が掛けてあった。
椅子はテーブルに沿って置いてあり、一番奥の椅子はひときわ豪華なものだった。
部屋の奥には背の高いメイドが立っていた。
「よくここまで来たね。ここでは王様と一緒に食事をすることができるよ」
メイドは椅子に座るようにすすめた。
座ろうとするケケをナナが制止した。
「王様がいらっしゃらないのですが、それはどういう意味なのかしら?」
「王様は常に私達のことを見守って下さっています」
メイドは厳かに話した。
「目の前に見える椅子、これは王様がいつもお座りになられているもの。そして王様と私達国民は近くにいなくても心が繋がっている。
ならば、王様と同じ建物で、それも王様がいつもお食事をされている場所で食事をするのは、王様と一緒に食事をしているのと同じこと!」
そんな理屈が通用するものか。
私は心の中ですぐに突っこんだ。
なんだこのメイドは。話しにならない。
この場にいないのだから、結局はいないんじゃないか。
「ありえないわ」
ナナは開口一番、そう言った。
その通りだよ、ナナ。もっと言ってやってくれ。
「ありえない、そんな考え方があったなんて! そうね! 私達は常に王様と繋がっているんだわ!」
あー……。そっちか。
こりゃダメだ。
「なるほどなのである!」
「納得」
お願いだから、誰か1人は納得しないで欲しかった……。
この国の人達は、人の言ったことを鵜呑みにしすぎじゃないか?
一定の沈黙が過ぎた後、ナナがまず椅子に座った。
他の3人はメイドの言うことを信じたようだが、私は信じていなかった。
ナナが座ってもなにも起きないことを確認した後、私も座った。
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