第32話 結果
宝石は最初の分かれ道を左折して、その後、右折を繰り返した先の部屋にあると言われた。
その部屋に行く途中、死んでいる人をたくさん見た。
苦しんだことがよく分かる死に顔だ。
王様というのがどれほど偉いのかは知らないが、命をこんな風に扱うなんて、よっぽどのクズだと思った。
ナナとケケ、ココの宝石の場所は違ったが、私の宝石は壺の中に入っていると言われた。
壺を前にして、メイドに嘘の場所を教えられた男の人の死に顔が頭に浮かんだ。
この壺を開けたら最後、私は死んでしまうのではないか。
とても開けたくなかった。しかし、メイドの言葉が本当なのだとしたら、開けなければ一生宝石を見つけることはできない。
蓋を持つ手が震える。
私は目を閉じて、勢いよく、蓋を開けた。
……なにも起こらなかった。
壺の中には私の紙にかかれている青い宝石が、あるだけ。
助かった……。
力が抜けて、尻餅をついた。
他の3人もほっとしたようだった。
メイドの言ったことは本当だったのだ。
私は少し拍子抜けした。
簡単に人が死んでしまうような試練だから、何かもっと罠があると思った。
だが、テテの言った通り宝石はメイドの言ったところにあって、メイドの言った通り、宝石は壺の中にあった。
この試練の運営者は、良くも悪くも素直だった。
情報も、自分の感情にも正直だ。まるで無垢な子供のように。
鍵のついた扉まで、私達は雑談をしながら歩いた。
「ナナはどうしてこの試練に参加したのだ?」
「我が家を建て直すためよ」
「家、壊れたの?」
ナナはふふっと笑った。
「違うわよ、ココ。私の家はここ数年、どんどん衰えていったの。思いつく原因はたくさんあって、数えきれないわ。
それぞれは小さな歪みだったはずなのだけれど、気づいた時には手遅れになっていて。
私は王様に家を復興させて欲しいと頼むつもりよ」
「なるほどなのである」
ケケが深く頷いた。
「そういうあなた達はどうして参加したのかしら?」
「私達は農業をしている。でも最近、動物がいっぱい畑にやってきて、食べ物を食べる」
「だから王様に、動物をどうにかして欲しいって頼むつもりである」
私は1つ気になったことを質問した。
「ケケ、どうして語尾に『である』をつけるの?」
「単純なことである。ココを守るためである!僕は昔、語尾に『である』をつけると相手に自分を強く見せられると聞いたのである。
それで、しばらく試してみたら、口癖になったのである」
「私の家族はケケだけ。私達を育てているのは
叔父さんと叔母さん。私達のことをよく思っていない。私達は2人で生きてきたようなもの」
複雑な家庭環境だな。
「分かった。教えてくれてありがとう」
「ネネはどうして参加したのであるか?」
やっぱり聞かれるよね……。
どう答えようか……。
正直に言うと、不審に思われそうだし……。
「単純に王様に会ってみたかったんだよ。
上奏というか、いつもありがとうってお礼を言おうと思ってるんだ」
やっぱり苦しいかな?この言い訳。
みんなの反応を見守る。
「素敵なのである! 僕も上奏するときにお礼を言うようにするのである!」
「とてもいいと思うわ!」
「いいと思う」
3人とも納得してくれた。
嘘をついた罪悪感はあるけれど、本当のことを言うと警戒されてしまうから仕方ない。
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