第375話麗と涼香の横浜(1)

翌日、大学から戻った麗は、涼香と電車を乗り継ぎ、元町中華街駅に到着。

麗は、やはりリードしようと思った。

「涼香さん、まずは元町に」


涼香は、顔が赤い。

「はい、もう、うれしゅうて、ドキドキして」

「憧れの元町なので」


涼香は、本当に憧れの元町だったようだ。

少しでも興味を惹かれた店には全て入って、じっくり見学。

麗は、「これもお役目かな」と思うので、見守る。


涼香は、そんな麗が面白い。

「麗様、女子の街歩きは大変でしょ?」

麗は、苦笑。

「涼香さんの笑顔が好きなので」と、似合わない言葉を放つ。


涼香は、ますます笑顔。

麗と指を絡め、再び歩き出す。


その涼香の足が、老舗の陶器店の前で止まった。

涼香

「麗様、このお店で、お屋敷にお土産を」

「お世話係たちから、そんな希望が」


麗には、断る理由がない。

「わかりました、存分に」と、一緒に陶器店に入った。


涼香は、この陶器店に入る前に、実は買う物も決めてあったようだ。

老舗陶器店オリジナルの、横浜らしい絵が描かれたマグカップを全種類買っている。

涼香

「ガス灯、乗合馬車、ビール、アイスクリン、蒸気船、人力車・・・」

「ほんま、お洒落な雰囲気で」

「ついでにキーホルダーも買います」


麗は、そんな涼香を見て、「観光客の爆買い」と思うけれど、口を挟まない。

麗が支払いや、九条屋敷への発送手続きを終えると、涼香は麗と腕を組む。

涼香

「はい、一仕事終えました」

「今から、涼香は麗様の女です」


麗は、「女」との言葉にゾクッとするけれど、そのまま店を出て、少し歩く。

麗は涼香の顔を見た、

「涼香さんにも何か特別に」

すると涼香の顔が、また赤い。

身体も押し付け気味になる。


麗は涼香と腕を組んだまま、老舗のバッグ店に入った。

「関西にも店を出していると思うけれど、横浜元町が本店なので」

涼香が選んだのは、この老舗バッグ店ならではの濃紺のハンドバッグ。

麗は、同じ色のブックカバーも追加する。


涼香は、ますますご機嫌。

「一生の思い出になります」

「はぁ・・・胸がスッとしました」

麗は、そんな涼香が面白い。

「一生などと、また来るかもしれません」

「それでも、一生と?」


麗は、言葉に詰まる涼香の腕を引く。

「それでは、山手に登ります」

「坂道きついから、ご用心を」


涼香は、確かにきつい坂道を登りながら思った。

「ほんま・・・今日までって・・・短すぎる」

「ずっと、手を引いて欲しい」

「夜は、一晩中、身体が続くまで」

それを思った時点で、涼香の足が少しもつれている。

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