第21話 十ー二

 そしてこの時、意外な応援者が現れる。

 「類、頑張れーーーーー!」

それは相手チームの観客席から聞こえてきた声援。そのため周りの応援者から変なものを見るような、好奇の目を向けられ、ある人たちは露骨に嫌な顔をしている。

 それは―、由香の声だ。

 『由香―。』

その時、由香はお兄さんではなく俺を応援してくれた。その事実が、何よりも嬉しくて、励みになって―。

 『ありがとう。』

 そして俺は先輩キャッチャーのサインに首を振る。

 すると先輩も意外な表情をしたが納得した様子で、俺たちは次のボールを決める。

 そして、投球モーションに入り―。

 

 「アウト!ゲームセット!」

―俺が最後に投げたのは、相手が待っていたカットボール。俺はその時、相手と真っ向勝負をすることに決めた。

 そして俺は相手の「待っている球」でも打ち取れる、その時そう確信していた。

 そしてお兄さんの打球は力なくショート方面に転がり―、

 平凡なショートゴロとなった。

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