第15話 五
「なるほどカットボールか!
考えたな神地!」
これは、俺の考えを監督の先生に伝えた後の先生の反応である。
今までの俺のピッチングは、ストレートにしろ変化球にしろ、いわゆる「きれいな回転のボール」ばかりであった。―それはそれでいいのだが、ここにカットボールという「汚い回転」、いい意味で中途半端に変化する球が加われば、バッターもさらに困惑する―。俺はそう考えたのだ。
「でも今から練習して、本番までに間に合うのか?」
「大丈夫です!やらせてください先生!」
すると先生は俺にとって少し意外なことを言う。
「神地。今日はいつもの自信満々の態度ではないな。これはいい意味でだ。
球種のことはお前に任せる。頑張れ!」
「ありがとうございます!」
『俺は無自覚に、前より真面目になっているのかもしれない。』
しかしそんなことはどうでもいい。問題はカットボールの習得だ。俺は気を取り直した。
「いい感じだ類!さっきのはちょうどバッターの手元で曲がる感じだ!これならうまくバットの芯を外せるぞ!」
その後、俺は先輩キャッチャーと一緒にブルペンでカットボールの練習を繰り返した。最初は俺の癖が出て、きれいにボールが回転し過ぎるためボールが意図したより曲がりすぎ、バッターのちょうどいい所にボールがいってしまったのだが、何度か投球を繰り返すうちに徐々に修正されていった。またその影響でストレートなど他の球種の回転が悪くならないようにも注意し、今までの球種の投球練習も俺は怠らなかった。
「あとは類、カットボールとストレートのフォームに若干の違いが見られるな。腕の振りを修正したら十分使えるボールになるぞ!」
「はい、先輩!」
「それにしても類、お前面構えが変わったな。」
先生に言われたようなことを、俺は先輩にも言われた。
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