第14話 四

 「野球に集中―。俺が天狗―。」

図星だった。

 俺はその日家に帰り、まるで同じアーティストの同じ楽曲を何度も何度もプレーヤーで再生するように頭の中で先輩の言葉を反芻していた。

 そしてそれをすればするほど、俺の浅はかさが身にしみる。

 それは、その先輩の指摘は言葉にすれば短いものかもしれない。

 しかしその指摘はまるでアーチェリーの矢が正確に的の中心を射るように俺の心の真ん中にグサッとささってしまった。

 そして俺は、「この部はお前のためだけにあるんじゃねえ。」という先輩の言葉の意味も、噛みしめる。

 「はあ。

 ―とりあえずこういう時は、新しいことをするに限る。

 そうだ、新しい球種だ!」

 俺は本当に野球が好きなんだろう。なぜかその日俺の頭はそういう発想になり、落ち着いた。

 そして俺は眠りにつく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る